「さあさあ、皆さま~。ちんどん鈴乃家からご宣伝でございます~」
とある日曜日の昼すぎ、福岡・高宮商店街の噴水広場でパレードが始まった。この日は子供たちの参加を募ったイベントで、チンドン太鼓を鳴らす新井理恵子さん(36)を先頭に、賑やかに隊列が練り歩く。近くを通るタクシーの運転手も車を停め、煙草をふかしながら懐かしそうに目を細めて眺めている。
チンドン屋の発祥は江戸時代。「飴売り」が滑稽な格好をして、落語の寄席の口上を真似て飴を売っていたのが始まりとされる。その後、人目を引く派手な衣装を身にまとった「広告宣伝業」へと役割を変え、最盛期の昭和20~30年代には全国に2500人いた。
だが、テレビ、ラジオの普及とともに衰退、現在ではチンドン屋で生計を立てているのは全国で50~60人ほどだ。新井さんは大学時代に友人に誘われたアルバイトがきっかけでこの世界に入り、27歳の時に「鈴乃家」を創業した。
「この仕事で何より大事なのは集客です。踊りや南京玉すだれ、とにかく人目を引くための芸を磨いています」(新井さん)
撮影■江森康之
※週刊ポスト2015年4月24日号