都内で5年ぶりとなる4月の降雪にテレビ局は大騒ぎ(大はしゃぎ?)したばかりだが(8日)、世界的にはスケールの違う異常気象が話題になっている。3月24日、南極のエスペランサ基地(アルゼンチン運営)で観測史上最高気温となる17.5度を記録したのだ。
エスペランサ基地はアルゼンチンにほど近い南極大陸の北端にあり、南極の中では気温が高いことで知られるが、それでも年間で最も暖かい1月の平均気温は1.5度。これまでの南極大陸の最高気温は1974年5月5日の15.0度が観測史上最高だった。
衝撃的なデータに世界気象機関(WMO)は大騒ぎになったが、まだ「最高記録更新」は認定されていない(8日時点)。気象庁は「観測の状態が正しかったのか、機械に不具合がなかったかを含めこのデータを新たな記録とするか検討中で、現在はWMOの報告を待っているところ」(気候情報課)という。
南極の気温上昇に世界がナーバスになるのは、地球温暖化による海面上昇の危機と直結するからだ。
2007年の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告書」によれば、地球の海面は20世紀の間に最大20センチ上昇しており、このままいけば21世紀中に最大88センチ上昇すると予測されている。環境省(地球温暖化問題委員会)のデータによれば、海面が1メートル上昇すれば、日本全国の砂浜の9割が失われるとされる。
先月には、南極を覆う氷床を保護する棚氷が激減しており、一部の地域では20%近くも減少したという研究報告書が米科学誌サイエンス電子版に発表された。
今回のデータは地球温暖化が進行していることを示すものなのか。南極・北極を科学的観点から研究している国立極地研究所の山内恭・特任教授が分析する。
「データが観測機材の不具合でないとすれば、偏西風の蛇行によって南米から温かい空気が運ばれてきたと考えるのが自然でしょう。これは一時的に起きる現象で、今回も4日ほどで気温は平常に戻っている。温暖化や南極の氷の融解とは直結しないと考えるべきです」
※週刊ポスト2015年4月24日号