カネ、性、暴力……欲望が渦巻く東洋一の歓楽街、新宿・歌舞伎町の景観が大きく変わり始めた。2008年に閉館を迎えた新宿コマ劇場の跡地には都内最大級のシネコンや高層ホテルなどが入る新宿東宝ビルが完成、4月17日にオープンした。
モダンな30階建てのビルの8階部分のテラスには、ゴジラの巨大な頭部が。初代ゴジラの身長約52メートルとほぼ同じ高さから街を見下ろす。コマ劇場の目前で昨年末に閉館した新宿ミラノ座跡地など、再開発はさらに進んでいく。
2003年に石原慎太郎都知事(当時)が打ち出した歌舞伎町の浄化作戦。2年間で風俗店・違法カジノなど約280店が摘発されたほか、約400人の暴力団関係者らが逮捕・送検された。街の浄化は「歌舞伎町ルネッサンス」と名付けられ引き継がれている。
だが、「変わったのは上辺だけですよ」と話すのは、「歌舞伎町案内人」の異名を持つ作家・李小牧(リー・シャム)氏。
「浄化によってうるさいキャッチや悪質な店の数は減って静かになりました。しかし、最近は中国人による外国人観光客を狙ったぼったくりの客引きが多発して、私に助けを求めてくるケースが多くなりました。この街はいまでもトラブルに満ちています」(李氏)
街は明るくきれいに生まれ変わりつつある。だが、そこに集まる人間の欲望はいささかの変化もないようだ。
撮影■小倉雄一郎
※週刊ポスト2015年4月24日号