ゴルフは飛距離を争うスポーツではない。でも飛ばないと面白くない。特に昔は飛ばしていたゴルファーが、年々ドライバーの飛距離を落として落胆することは多い。だからだろう。かつてルール変更で姿を消した、ラクして飛ばせる「高反発ドライバー」が再び脚光を浴びている。
高反発ドライバーは、その名の通り反発係数を高めて飛距離アップを生み出す、単純明快で効果の高い秘密兵器である。以前は人気を博して広く出回っていた。しかし2008年のゴルフ規則改正で使用禁止となってしまった。
米国のプロツアーでティショットの飛距離が伸びすぎ、パー5の規定打数の意味がなくなると問題になったためだ。そのためR&A(※注)がクラブ規制に乗り出し、1999年に反発係数を抑えるルール変更が実施されたのである。日本でも追随する形で2008年に使用が禁止された。
【※注 R&A:ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース。世界のゴルフ・ルールを司り、日本ゴルフ協会(JGA)もこの団体の傘下にある】
その結果、各クラブメーカーは競技に使えない“違反クラブ”を大っぴらに売ることはできなくなり、高反発ドライバーは店頭から姿を消していった。
しかし風向きはここに来てアゲインストからフォローに変わった。都内のゴルフ用品店販売員が語る。
「2013年頃からでしょうか。高反発ドライバーが、地方のクラブメーカーを中心に再び作られるようになったんです。背景にあったのは、お客様からの強い飛距離への要望でした。高反発はルール不適合品ではありますが、競技で使用禁止になるだけであって、私的なラウンドで使っても問題はない。別に競技に出るわけではないから、昔のように飛ばしたい、もっとゴルフを楽しみたいという声に押されて新作が出始めたのです」
ゴルファーの切なる願いに業界団体も動いた。日本ゴルフ用品協会(JGGA)が今年2月1日付で「ゴルフ用品ルール適合外品の流通に関するJGGAの対応について」と題するプレスリリースを発表した。
ゴルフ規則で高反発クラブが規制されていることを明示した上で、ゴルフが「競技としてだけでなく様々な目的、環境でプレーされている」ことを指摘。毎年開催されるジャパン・ゴルフ・フェア(見本市)にも、規制を超えるクラブやボールが出品されているとして、適合外品の正しい使用を広く働きかけていくことを宣言している。日本ゴルフ協会(JGA)もこんな見解を寄せた。
「規則を統括している立場として、不適合クラブでプレーされることを容認することはできません。しかしながら健康や親交を深めるためにプレーされるなど、個人の目的まで否定することはできません」
ゴルフ界全体が、高反発ドライバーの“規制緩和”に動き出している。
※週刊ポスト2015年4月24日号