1989年6月の天安門事件で、指名手配リストに入れられた中国の民主化運動指導者の1人で、現在米国に亡命中の熊えん(「森」という漢字の「木」を「火」に変える)氏が母親の重病を理由に一時帰国を認めるよう、習近平国家主席と李克強首相に公開書簡を送ったことを明らかにした。
米国の駐ヒューストン中国総領事館に入国ビザの発給を拒否されたためだ。ネット上では、中国共産党政権の非情さを批判する声が出ている。米政府系ラジオ局「ボイス・オブ・アメリカ」が報じた。
熊氏は元北京政法大学生で、1989年の天安門事件後、21人の指名手配犯の1人として逃走中に逮捕、投獄されたが、1992年に病気治療の名目で、米国に移送された。熊氏は米国でキリスト教の洗礼を受け、牧師として聖職者の道を歩み、現在、米軍専属の牧師を務めている。
その後、米国名に改めた際に発行されたパスポートを使って、2012年1月、中国に入国し、故郷の湖北省で、母親とともに春節(旧正月)を祝った。このときは、中国側が熊氏の米国名をチェックできなかったため、入国できたとみられる。
しかし、熊氏は今年2月の春節の際も地元ヒューストンの中国総領事館に入国ビザを申請したが、今回は米国名がブラックリストに載っており、ビザ発給を拒否された。
熊氏の母親はすでに80歳で、アルツハイマー病を患い、地元の病院に入院中で、余命幾ばくもない状態。熊氏は母親の写真を肌身離さず持ち歩き、時間があるときは母親の写真をみつめて、無事を祈り続ける毎日だという。
今年9月、習近平主席が訪米してオバマ大統領との首脳会談に臨むほか、党政治局常務委員の王岐山・党中央規律検査委員会書記が近く訪米すると伝えられていることから、人道的な見地から、中国当局が熊氏の入国を認めるのではないかとの希望的観測も出ている。
しかし、ネット上では「習近平ら『紅二代』である太子党(高級幹部子弟)グループは最も残酷な人々の集まりだ。人道主義などさらさら考えたこともなく、熊氏の母親を思う気持ちに、心が動かされることもないだろう」や「人道主義からいえば、熊氏の帰国は許されるべきだが、共産主義教育を受けた習氏らが熊氏の帰国を許すはずはないだろう」などと習氏らを痛烈に批判する書き込みが多い。