90年間にわたって、女形一筋で中村屋三代に尽くしてきた最高齢の歌舞伎役者・中村小山三さん(享年94)が、4月6日、虚血性心不全のため亡くなった。十七代目・中村勘三郎は生前、「オレが死んだら小山三を一緒に棺桶に入れてくれ」と話したほど、中村屋から絶大な信頼を置かれていた小山三さん。
その日、中村勘九郎(33才)・七之助(31才)兄弟は、『平成中村座』の公演中に小山三さんが倒れたことを知り、終演後に病院に駆けつけたが、最後の言葉を交わすことはかなわなかったという。
「晩年は出てきただけで私たちより拍手がありました」
七之助がこう語ったように、小山三さんは多くの人から愛されていた。
葬儀には、歌舞伎界からだけではなく、笑福亭鶴瓶(63才)、宮藤官九郎(44才)、笹野高史(66才)、ラサール石井(59才)なども駆けつけ、最後の別れを惜しんだ。 また葬儀には仕事の都合で姿を見せなかったものの、小山三さんの訃報に触れ、深い悲しみに暮れているのが松潤だった。
「松本さんは、七之助さんと高校時代からの親友で、当時から中村屋に出入りしていたため、自然と中村屋の関係者のかたがたとも親交が深まっていったようです。
松本さんは七之助さんの家に泊まることも多くて、中村屋の稽古場の隅っこでダンスの練習をしたりすることもあって、小山三さんとも仲よくなったみたいですよ。よくふたりでバカ話をしていましたから」(中村屋関係者)
年の差63才の意外な交流――小山三さんは松潤の役者としての才能も買っていたという。
「中村座の打ち上げの際、小山三さんが松本さんに“あなたも、芝居をする人ならば、いろいろな見識を深めたほうがいい”と誘って、松本さんが中村屋の打ち上げに参加したこともあったそうです」(前出・中村屋関係者)
2012年12月、七之助の父、十八代・中村勘三郎さん(享年57)が亡くなったときには、こんなエピソードが…。
「小山三さんは勘三郎さんの葬儀の際、“自分より先に逝くなんて…”と本当にショックを受けて泣いていたんです。そんな小山三さんに声をかけ、励ましていたのが松本さんだったんです。
しかも、松本さんは国民的アイドルにもかかわらず、裏方としてお茶配りをしたりと、悲しみに暮れる中村屋の人々を支えていたみたいなんです。そんな姿に小山三さんも心を打たれていましたね」(前出・中村屋関係者)
最近では、こんな掛け合いをするふたりの姿も見かけられている。
「松本さんが中村屋の舞台を観劇に来た際、小山三さんが松本さんに気づいて、“花見客に嵐の松潤さんも来ているらしいけど、会ってみたいもんだねぇ~”とアドリブを入れると、客席の松本さんが立ち上がり、会釈して応えるなんてこともあったみたいですよ」(前出・中村屋関係者)
そして、公演が終了すると松潤がお土産を持って小山三さんの楽屋に遊びに行っていたという。
「生前、勘三郎さんは松本さんのことを“三番目の息子”と話していましたが、小山三さんにとっても松本さんは“息子”のような存在になっていたんじゃないでしょうか」(前出・中村屋関係者)
アイドルと歌舞伎役者――住む世界は違っても、松潤は小山三さんの意思を受け継ぎ、芸の道に精進していく決意を新たにしていることだろう。
※女性セブン2015年4月30日号