4月10日に茨城県鉾田市で発生した「イルカの大量死」は、天変地異の前触れなのではないかと囁かれている。
専門家の間でも様々な見解があり、鯨類の座礁について発生時期や過去の事例などから地震以外の様々な可能性を挙げている人はいる。だが、地震との関連を指摘する専門家も少なくない。
過去のイルカの行動や特徴から検証すると地震察知能力を想起させることが多い。
例えば阪神・淡路大震災の数日前には神戸市須磨区の水族館でイルカが調教師の命令を聞かず、芸をしなくなったと報告された。2004年のスマトラ島沖大地震でも地震発生前にスマトラ沖のイルカが集団で移動する姿が目撃されたという。
こうした察知能力のカギとされるのが、イルカの並はずれた聴力である。大阪府立環境農林水産総合研究所の鍋島靖信・研究員がイルカの生態を解説する。
「イルカの生活は音に依存している。鯨類の脳の約8割は音を処理するためにあり、20ヘルツから200キロヘルツまでの音を聞き分けることができる。海中は空気中より音が伝わりやすいため、イルカは濁っている海を高速で泳いでも障害物や仲間にぶつかることはありません」
鍋島氏はこの聴力が地震察知においても発揮されている可能性を指摘する。大地震が発生する前は、巨大なエネルギーが蓄積して、海底のプレートに地殻変動が生じることが知られている。
「その際、地震計では感知できないほどの低周波振動や地磁気の異常、海底から沸き起こる地鳴りのような音が生じます。そうした音や揺れをキャッチしたイルカが異変を逃れようとパニックになり、集団座礁を引き起こすのかもしれません。
阪神・淡路大震災で須磨区の水族館のイルカが異常行動に出たのも、震源のすぐ横の立地で低周波振動を感知したからではないかと考えられる」
気になるキーワードが「地鳴り」である。4月11日深夜から12日未明にかけて、三重県内で「ゴゴゴゴッ」という2度にわたる地鳴りを聞いたと多数の住民が報告しており、ネット上でも地震との関連を懸念する声が相次いでいた。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2015年5月1日号