これまで我が世の春を謳歌してきた中国の官僚たちだが、最近の風向きはかなり変わったようである。現地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏がレポートする。
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習近平指導部の進める反腐敗キャンペーンの薬が意外な形で効いている。いまや官僚たちにとって最も心配なのは身内の裏切りである。
そのことを実感させられる騒動が起きたのは2014年11月のことだ。すでに半年前の話ということになるが、問題が公開されたのは3月23日、『法制晩報』が報じたことがきっかけだった。
記事のタイトルは、〈銀行の支社長が父親名義の口座に隠し財産 妻の告発によって明らかに〉である。
記事を読まなくても内容は明らかだが、要するに「愛人をかこっているとの疑惑を募らせた妻が、その復讐として告発した」という話だ。告発されたのは招商銀行呂梁支社の李という支社長で、『法制晩報』が主剤に動いたときには、すでに李氏は銀行をクビになっていたが、父親名義の口座を隠し口座としていたことについては、「顧客に頼まれて金を預かっていただけ」だと説明している。説明が本当であるにせよウソにせよ、彼が大きな代償を払ったことに違いない。
これと同じように意外な告発者によって権力から転がり落ちた党幹部は李元支社長だけではない。
3月27日に『中国新聞ネット』にアップされた記事が伝えたのは、安徽省銀行業監督管理局と同省食品薬品監督管理局のいずれも副局長という二人の幹部だ。
興味深いのは、二人の汚職の疑惑が発覚したのが、女二人組の窃盗グループの告発によるものだったことだ。
女盗賊の二人は2014年7月、二人の幹部の自宅に忍び込み盗みを働いた。脛に傷を持つ二人が警察に被害を届けることはなかったが、その後、二人の女は別件で警察に捕まる。
そこで「もし汚職に関する情報を定期要したら減刑する」と持ちかけられ、二人の副局長の自宅でみたことを話したという。女盗賊の告発によれば、二人の副局長宅には大量の高級酒、高級たばこのほかにプリペイドカードが山と積まれていたという。
こんなことからいきなり落馬するとなれば、中国の官僚は本当に枕を高くして眠ることはできないだろう。