学校の教室で所在なさげに机に向かう10数匹の猿の生徒と教壇に立つ校長先生──こんなユニークな設定を作り上げ一世を風靡するも、2013年末に閉園した栃木県のテーマパーク「日光猿軍団」が4月29日に復活する。
1992年にオープンした同園が幕を下ろすきっかけになったのは、2011年の東日本大震災だった。放射能汚染の風評被害で来園者が激減し、校長の間中敏雄氏はやむなく閉園を決断した。
今回施設を引き継いだのは、膝の上にニホンザルの次郎が手をつく「反省のポーズ」で知られる猿まわし師の村崎太郎氏だ。
「申し訳ないのですが、猿まわしに関していえば間中さんは素人だと思っています。しかし、彼が作り上げた猿の集団芸という素晴らしいエンターテインメントの灯を消してはならないと思い、後継者がいないなら任せてくださいとお願いしました」(村崎氏)
だが、かつてのライバルである村崎氏の申し出を、間中氏は断わった。猿たちのアドリブを上手に使った集団芸の間中氏と、1匹の猿に完璧な芸を仕込んでいく村崎氏。芸に対する考え方に大きな隔たりがあったからだ。
間中氏のもとに足を運ぶこと50回以上、1年半にわたる交渉の末、村崎氏の熱意が実った。劇場や調教場を買い取り、「日光さる軍団」と名前を変えて復活する。
「舞台の上で人間のサインで動けるようになるには簡単な芸でも1~2か月かかるし、30種類の芸を仕込もうと思えば1年はかかります。猿にも芸の好き嫌いがあって、手をあげるのが好きなのもいれば、嫌いな猿もいて、そこを見極めるのが難しい。でも、15秒に1回は芸をしたり、お客さんを笑わせることができると思います」(村崎氏)
6~9匹による「おさるの大病院」「おさるの警察」という新しい設定の演目などに挑み、『アナと雪の女王』の曲に合わせた芸や「ダメよ~ダメダメ」の台詞が飛び出す場面も用意。新生猿軍団が見せる生まれ変わったパフォーマンスが楽しみだ。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2015年5月1日号