株価は上がり、統一地方選でも勝って、浮かれ放題の安倍晋三首相だが、実は足下は大揺れだ。
現在、首相官邸で実権を握っているのが菅義偉・官房長官と世耕弘成・官房副長官のラインだ。官房長官はあらゆる政策で各省庁の調整を行なう役目であり、その権限は絶大だ。
その菅氏のライバルがお友達大臣の筆頭格の下村博文・文部科学相だ。下村氏は長く首相と同じ細田派(清和会)に所属し、安倍氏とは家族ぐるみの付き合いで知られる。「いずれ官房長官として安倍総理を支えるのが悲願」(細田派中堅)というから菅氏は目障りな存在に映るだろう。
その2人が安倍政権が力を入れる「カジノ特区」の招致合戦で激突した。東京選出の下村氏は、「東京・お台場の一角に国際観光産業としてのカジノを構えたい。お台場に行ったら歌舞伎も浄瑠璃もAKB48も見られる。その一角だけでも年間2000万人ぐらいの集客力があるようなものだ。これだけで東京はものすごく元気になる」と旗を振り、当初はお台場でのカジノ開設が有力視されていた。
ところが、菅氏の地元・横浜に逆転されたという。
「政府は東京五輪までに全国2か所にカジノ特区を開設する方針だ。有力なのは横浜と大阪。お台場は東京都知事が慎重派の舛添要一氏に代わったことで後退し、その隙に菅さんが巻き返した。特区を指定する国家戦略特別区域諮問会議のメンバーには菅さんと甘利明・経済再生相の2人の神奈川選出議員がいるのに、下村氏ら東京選出議員が1人も入っていない」(カジノ議連の議員)
菅vs下村の力関係に大きな影響を与えたのが下村氏の政治資金スキャンダルだ。下村氏を応援する教育関係者の団体が政治団体の届出をしないままパーティーや講演会を開催し、下村氏が寄付を受けていたことが政治資金規正法違反にあたると追及された。
安倍首相はあくまで下村氏を庇(かば)ったが、「これで次の内閣改造でも下村氏の官房長官の目はまずなくなり、菅氏は漁夫の利を得た」(自民党幹部)格好なのだ。
※週刊ポスト2015年5月1日号