西日本の肉食文化は、牛肉はもちろん、鶏肉、豚肉、ホルモンなど多種多様な食べ方を誇る。ゴールデンウィークにもし旅行するなら、どこになにを食べに行くか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がガイドする。
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今年もゴールデンウィークには、首都圏で”肉祭り”が行われる。では関西圏はどうか……というと、実はすでに「肉汁祭」というイベントが4月14日からスタートしている。5月11日までの間、週替わりで10店ずつ、4週間で40店舗がさまざまな”肉丼”を提供する催しだ。連休にはさらなる盛り上がりが期待される。
そんな”西”にも地域の名物肉は多数ある。まず関西の経済・文化の中心地である大阪だ。大阪と言えば、明治の文明開化以前から福沢諭吉なども牛肉を食べていた牛肉文化圏。肉と言えば、牛を指し、肉じゃがやカレーは言うに及ばず、カツはビフカツ、肉うどんのうどん抜き――「肉吸い」も名物である。
近畿エリア全般に”牛肉文化圏”であり、兵庫の神戸ビーフや但馬牛、三重の松阪牛、滋賀の近江牛など銘柄牛も多数存在する。例えば松阪牛で知られる三重の松阪。全国にその名を轟かせる「和田金」のほか「牛銀」などすき焼きの名店がいくつもある。県内の桑名や津でも他府県民には想像もできないほど支持されているが、松阪では焼肉業態ながら豆味噌で味つけをした「ホルモン」の人気も高い。
隣の中部地方はどうかというと、名古屋は明治維新後、旧尾張藩士が「サムライ養鶏」と言われるほど養鶏事業に注力しただけあって鶏食文化圏となっている。銘柄鶏「名古屋コーチン」があり、手羽先のからあげのほか、「ひきずり」とも言われる鶏すきなど、鍋様の鶏料理のメニューも豊富。北上すると、長野県には「山賊焼き」と言われるにんにくの効いた鶏肉のからあげが、新潟ではカレー味の鶏もも肉の素揚げがそれぞれ名物となっている。
ちなみに北陸エリアは、新潟市内を中心とした醤油ダレの「タレカツ丼」や長岡の「洋風カツ丼」、福井のソースカツ丼など、カツ丼のバリエーションが豊富なエリアでもある。北陸地方の港は江戸時代の「北前船」時代から海路による文化交流が行われてきた。食べ物にも、社交的な気風が見え隠れする。
さて西のほう、中国地方にも一定の”肉傾向”は伺える。「鶏」「ホルモン」を具材とした鉄板を使った「焼き麺」が地元では親しまれている。岡山の「ひるぜん焼きそば」は鶏肉、「津山ホルモンうどん」はホルモンなど独特の具材を使った焼きそば・焼きうどん様のご当地グルメの知名度は、この数年でグッと上がった。実は銘柄鶏「大山どり」の本場、鳥取にも地元で「ホルそば」と呼ばれる、ホルモン入り焼きそばが地元では親しまれている。それほど「肉」のイメージはなくとも実は味わい深いエリアだ。
四国ではエリアによって、「肉」「魚」「うどん」など多様な嗜好があるが、愛媛県の今治近辺は肉食傾向が強い。鉄板で押しつけるように焼く「今治やきとり」や、から揚げの「せんざんき」など、古くから鶏の存在感が強かったが、最近では「今治焼豚玉子飯」という半熟目玉焼きを乗せたチャーシュー丼の知名度も全国区になってきた。