中国の習近平国家主席が4月20~21日までパキスタンを訪れ、同国のシャリフ首相やフセイン大統領と会談し、中国によるパキスタンの水力発電ダムなどのインフラ整備を目的とした大型投資で合意した。その際、同国で建設工事に従事する中国人労働者を守るために、パキスタン側が軍特殊部隊1万人を派遣することで一致したことが分かった。
他国民を保護するために、軍が常時警備に当たるのは極めて珍しい。ネット上では、「それだけ、中国人が嫌われている証拠」との辛辣な書き込みがみられる。米政府系ラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ」が報じた。
中パ首脳会談では同自治区内の中国北西部とパキスタン南西部を結ぶ「中パ経済回廊」の沿線開発に中国が450億ドル(約5兆4000億円)を投融資することで合意。アジアと欧州を結ぶ経済圏「シルクロード構想」を中国は掲げており、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設を主導。すでに創設メンバーとして57か国が認定されている。
このようななか、習氏が今年初めての外遊先としてパキスタンを選んだのは、インフラ整備を進めたいパキスタンとの関係を強固にすることで、南アジアで一層、影響力を強化するとの思惑が働いている。
中パ経済回廊の工期は2030年までで、中国の新疆ウイグル自治区南部のカシュガルからパキスタンの首都イスラマバードからラホールを経てアラビア海沿岸部のカラチからクワダルに至る全長3000kmに及ぶ。この間の高速道路建設や高速鉄道(新幹線)網の整備、発電所や港湾建設などが加わる。
しかし、それには解決しなければならない懸念材料がある。それは、中国から派遣される労働者の安全確保だ。最近、海外で中国人労働者が襲撃されるケースが増えているからだ。
それ以上に、パキスタンは中国からの独立をめざすウイグル族の一部勢力が多数居住し、テロ活動が活発化している新疆ウイグル自治区と接しているほか、パキスタン国内にも中国と敵対するイスラム過激派が多数存在している。
このため、中国の最高指導者である習氏が直接、フセイン大統領らパキスタン首脳にパキスタン軍特殊部隊の派遣を要請した。これに対して、パキスタン側は少将級の軍幹部を総司令官とする特殊部隊1万人が常時、中国の労働者を保護する体制をとることを約束した。これは国際慣例上、極めて異例な措置だ。
これについて、ネット上では「中国とパキスタンの友好関係を誇示する狙いもあるだろうが、イスラム過激派に限らず、中国が嫌われている証拠で、多数の中国人の血が流れるのが怖い」などとの書き込みがみられる。