ビジネス

ホームセンターが農協のシェア奪いにいく 専門誌編集長解説

 最先端を行く専門誌を追う──。今回は業界唯一の「ホームセンター」の専門誌を紹介します。

『ダイヤモンド・ホームセンター』

創刊:1982年
月刊誌:年6回 偶数月15日発売
部数:7966部
読者層:ホームセンター経営者、店長、店舗スタッフほか
定価:3090円
購入方法:大手書店に注文するか、発売元ダイヤモンド・フリードマン社に直接注文。

 いったん足を踏み入れたら、次から次へと気になる商品が目に飛び込んできて、あっという間に時間が過ぎていくホームセンター。

 そもそもは、「アメリカで定着していたDIYの店を日本にも、という発想で1970年代に全国に広がっていきました」と阿部幸治編集長(36才)。

 DIY(Do It Yourself=専門業者でない人が自分で何かを作ったり、修繕すること)といえば以前は棚を作ったり、ペンキを塗ったりするお父さんの日曜大工というイメージだったが、最近は様変わりしていると言う。

「タレントの森泉さん、中田喜子さんの影響も大きいですね。壊れたものを元通りにするのではなく、壁紙一枚変えるだけで部屋がこんなにオシャレになる、という女性の自己表現のひとつと捉えられてもいます」

 とはいうものの、阿部さんが全国のホームセンターを取材して肌で感じるのは、“各社の出身母体”だという。

 たとえば、他社よりファッショナブルな印象の『カインズホーム』は、呉服商から総合スーパーを経てホームセンターに。『コメリ』は元は米穀商。『コーナン』は石油製品の小売業。『ナフコ』や『島忠』は家具店、『ジョイフル本田』は材木店といった具合だ。

「経営面では代替わりが進んでいますが、多くは創業者がご健在で、目を光らせています。それだけに会社ごとに得意な商品が色濃く出ますね」

 そうした中、ホームセンター各社が今、最も注目しているのが、意外にも農業。同誌の昨年7月号では、“農奪”というタイトルで、〈肥料、農薬、農業機械で約1.1兆円市場〉にもなる巨大マーケットを農協から奪わんとする、各社の取り組みを取材・分析して大きな反響を呼んだ。

 その中で〈専門知識を持った農業アドバイザーの設置などいち早く農業部門の開拓に取り組んできたコメリ。…農業部門の売り上げは全カテゴリーの中で最大の伸び率を達成〉して、「米穀商時代からの農家との結びつきの強さを発揮しています」と阿部さん。

 しかし、問題がないわけではない。農業アドバイザーは〈募集すれば応募は来るが、…採用に至るのは10人に1人。顧客第一が接客業の鉄則で、…お客さまに対するホスピタリティも求められる。知識・経験は非常に高くても、指導員という立場から抜け出せない人も多い〉そうで、まだ採用の予定人数には達していないのだとか。

 とはいえ長い間、農協と二人三脚で農業を続けてきた農家は2000年から2010年で53万人減少。その分、無農薬、ブランド野菜などを作る“趣味的農家”は、現在、約250万人といわれ、今後ますます増えて、ホームセンターの大きな顧客になりえると同誌はみる。

 ホームセンターに吹く新たな風はそれだけではない。昨今は、車に乗らない若者が増えているというが、彼らもホームセンターと無縁ではなく、パソコンで店内を回るようにしてネットショッピングをするシステムが整っている。

 自家用車でふらりと訪れ、大きな物を買いたくなった人には、軽トラックの無料貸し出しのサービスもある。

 職人さんのために、プロ仕様の売り場だけ午前6時半からオープンして、コーヒーなどを時間限定で無料サービスしている店も多いとか。

「毎日、買いに来てくれる職人さんを他店に取られないために、どこも必死です。いずれにしても、衣食住のうち、衣と食は満たされている日本で、住だけがまだまだ。その分、ホームセンターの伸びしろがあるんです」と言う阿部さんに、最も賢い活用術を聞くと――。

「リフォームを考えたら、真っ先に行ってください。自社商品しか扱いのないメーカーの展示場とは違って、ホームセンターなら幅広いメーカーの商品を取り揃えているので、冷静に比較できます。収納はコーナーを見るだけで、アイディアが浮かびます。家電も量販店より店舗維持費や人件費のコストが低いので、安い商品もありますよ」

 今週末、さっそく出かけてみますか?

■取材・文/野原広子

※女性セブン2015年5月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
日米通算200勝を前に渋みが続く田中
15歳の田中将大を“投手に抜擢”した恩師が語る「指先の感覚が良かった」の原点 大願の200勝に向けて「スタイルチェンジが必要」のエールを贈る
週刊ポスト
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
裏アカ騒動、その代償は大きかった
《まじで早く辞めてくんねえかな》モー娘。北川莉央“裏アカ流出騒動” 同じ騒ぎ起こした先輩アイドルと同じ「ソロの道」歩むか
NEWSポストセブン
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
【「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手】積水ハウス55億円詐欺事件・受刑者との往復書簡 “主犯格”は「騙された」と主張、食い違う当事者たちの言い分
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト
4月24日発売の『週刊文春』で、“二股交際疑惑”を報じられた女優・永野芽郁
【ギリギリセーフの可能性も】不倫報道・永野芽郁と田中圭のCMクライアント企業は横並びで「様子見」…NTTコミュニケーションズほか寄せられた「見解」
NEWSポストセブン
ミニから美脚が飛び出す深田恭子
《半同棲ライフの実態》深田恭子の新恋人“茶髪にピアスのテレビマン”が匂わせから一転、SNSを削除した理由「彼なりに覚悟を示した」
NEWSポストセブン
保育士の行仕由佳さん(35)とプロボクサーだった佐藤蓮真容疑者(21)の関係とはいったい──(本人SNSより)
《宮城・保育士死体遺棄》「亡くなった女性とは“親しい仲”だと聞いていました」行仕由佳さんとプロボクサー・佐藤蓮真容疑者(21)の“意外な関係性”
NEWSポストセブン
過去のセクハラが報じられた石橋貴明
とんねるず・石橋貴明 恒例の人気特番が消滅危機のなか「がん闘病」を支える女性
週刊ポスト