昨年発売した2枚のベストアルバムが30万枚の売り上げを記録し、勢いそのままに12年ぶりの紅白歌合戦出場を果たした中森明菜(49)。その復活劇が同じレコード会社に所属する松田聖子(53)の立場を微妙なものにしている。
もともとソニーミュージックに所属していた聖子は2009年にユニバーサルミュージックに移籍した。「国外への展開まで視野に入れて海外セールスに強いレーベルに移った」(音楽業界関係者)とされるが、作詞作曲に竹内まりやを起用した『特別な恋人』(2011年)の売り上げは3万枚に届かないなど(ランキングは最高で14位)、移籍後はヒット曲に恵まれなかった。
そんな中、明菜が劇的な復活を果たす。「レーベル側は所属アーティストのうちドリカム、華原朋美、そして明菜を柱にプロモーションするようになり、軽く見られていると感じた聖子は再移籍を考えている」(同前)というのである。
ユニバーサルは「特定のアーティストに特別に力を入れることはなく、松田聖子の移籍もない」と回答するが、すれ違いは今に始まったことではないようだ。
「聖子は毎年6~8月にツアーライブを行なう一方、大人の歌手としてディナーショーにもっと力を入れたいという希望があった。しかし、会場となる高級ホテルはCDやグッズの物品販売がしにくく、レーベル側はツアーに重きを置きたい。ユニバーサルもクリスマスディナーショーを22公演に増やすなど配慮を見せたものの、今も思惑には違いがある」(同前)
とはいえ移籍への道は容易ではない。明菜の例からわかるように、CD業界はオールタイムベスト盤の売り上げに頼る傾向が年々強まっている。過去全作品からのチョイスになるため、移籍している場合はレーベルをまたいでの企画、調整が必要となる。レーベル同士での軋轢を嫌う業界の体質もある。ケンカ別れで飛び出しても行き先を見つけるのは至難の業だ。
5年前に明菜が活動休止宣言した時には考えられなかった逆転劇が起きている。
※週刊ポスト2015年5月8・16日号