中国で転職を望む公務員が1万人にも上っていることが分かった。これは前年比30%増と大幅に増加しているのだ。中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏が解説する。
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中国共産党一党独裁の中国では、公務員といえば党員であり、大袈裟に言えば権力をほしいままに一生楽して暮らせて、退職後は手厚い年金で豊かな老後が約束されていたはずだった。
しかし、いまでは反腐敗運動が苛烈を極めるなか、うかうかしていると逮捕されてしまう危険な職業と成り下がっており、中国における根強い「公務員神話」が崩れ始めているようだ。
中国の大手求人サイト「智聯招聘」によると、新たな職を求めて同サイトに登録している公務員は1万人以上で、2月下旬の春節(旧正月)以来、急速に増加しているという。
中国では春節を境に転職する人が多く、遅くとも5月初旬のメーデーの大型連休後、転職が本格化する。これらの公務員も同様で、春節前は同サイトに履歴書を送ってきた公務員は5000人程度だったが、その後はうなぎ登りで、3月末現在で1万人を突破しており、今後も転職希望の公務員の数が増えるとみられる。
一般的な中国の公務員は出勤すると、まずお茶を入れて、それから時間をかけて新聞を読み、昼ご飯に出かけて、午後は昼寝をしてから、ちょこちょこっと仕事をして、就業時間になると、すぐに帰るという毎日だ。昼食か夕食は業者から接待され、高級レストランで飲み食いすることもたびたびだった。
ところが、最近は習近平国家主席が提唱する反腐敗運動で、接待がめっきりと減り、「灰色収入」といわれる賄賂も激減で、公務員のうま味がなくなった。さらに、もともと給料は安いうえに、やはり習近平指導部によるぜいたく禁止令で、給料が低いままに抑え込まれており、生活も楽ではなくなってしまった。
このためか、昨年の「高級官僚への登竜門」である国家公務員試験の申請者の30%が試験会場に姿を見せず、中国23省・自治区・直轄市のうち16省市区で公務員試験の登録者数が減少したほどだ。公務員事情に詳しいジャーナリストはこう解説する。
「共産党はもともと序列に厳しいのですが、役所も上下関係が厳しく、上司に嫌われると出世できません。ですから、ゴマスリでないと出世できないのですが、最近の若手は一人っ子で、小さいころから甘やかされて育っていて、わがままで自分勝手ですから、公務員には向かないのです。さらに、日ごろから楽をしていますから、給料も良くない公務員はなおさらです。この転職希望の1万人も、若手が大半だと思います」