自由奔放なキャラクターで人気の料理愛好家、平野レミさん。昨年は『あさイチ』(NHK)の本番中に作った料理でブロッコリーが倒れ、ネットで話題に。『きょうの料理』(NHK・Eテレ)では「どっかん春キャベツの丸ごと煮」の作り方が「ダイナミックすぎる」と話題を呼んだ。そんなレミさんに、楽しく料理をする秘訣を聞いた。
――レミさんといえば、NHK『きょうの料理』でいつも楽しく料理をされている姿が印象的です。
平野:皆さん、テレビで見た私の料理を家で真似して作ってくれるわけだから、私が元気にやらなくてどうするの、と思いますよ。私がつまらなくやったっていたら、見ている人もつまらないでしょ? だから楽しくやることに関しては一生懸命。ただ、クレームも変わったものが多いみたいね。
包丁の刃を向こう側(視聴者側)に向けて置いたら「刺されると思った」とか、「ごぼうのこっち側は食べられません。汚いから捨てちゃって」と言ったら「汚いとは何事だ」とか。でも私としては丁寧にやっているつもりなの。亡き母からは、「レミちゃん、NHKだと丁寧なのね」って言われていたくらいだから。
――最初からずっと同じスタイルでテレビに出られているんですか?
平野:30年ぐらい前かな。完熟トマトを手でギュッと潰して牛肉の中に入れたの。その回はいっぱい電話がかかってきたみたい。「ちゃんと包丁を使え」って。もう私はこれで呼ばれないだろうなと思っていたら、新聞の書評に「この間の平野レミの料理は奇抜で楽しくて最高だった」と書かれて、それから急に風向きが変わったの。どんどんお呼びがかかっちゃって。
――これまでいろんなハプニングがあったと思いますが…。
平野:NHKの『あさイチ』でブロッコリーを立てたままおいしいソースをかけたの。それで「できました」って言ったら、バタンって倒れちゃって。あららって言いながら割り箸を持って来て、えいやって起こして、「はいできました」ってやったのよ。その動画をネットで200万人が見たそうね。「ブロッコリーが倒れた! 平野レミ面白い!」って言われて。今私がテレビに出る時には、その映像が名刺代わりになっちゃっているの。私にとっては、立っている物が倒れることは不思議でも何でもなくて、「普通のことじゃない?」と思ったんだけど。
――おとがめなしでした?
平野:ないない! でもその後、『あさイチ』からの電話もない(笑い)。
――時代とともに料理も変わってきていると思いますが、どんな点に変化を感じますか。
平野:実は私、料理番組って一回も見たことがないの。基本的にテレビを見ないから、芸能人の方とかもよく知らない。何だかわからないままテレビに出ているけど、私、いつもこのままだからね。自然のまま。女優でもないし、何でもないからこのままでいいでしょ?
――料理を楽しむコツはありますか?
平野:音楽は耳で楽しむもの、絵画は目で楽しむものっていうでしょう? 料理は舌で味を楽しめるし、鼻で香りを楽しめるし、耳で音を楽しめる。五感で楽しめるのが料理のいいところね。シャンソン歌手にとっての幸せの瞬間が拍手をいっぱいもらった時だとしたら、料理を作る人にとっての幸せの瞬間は、自分が作ったものを誰かが食べてくれて、笑顔で「おいしい~」って言ってくれた時よね。もちろん自分で食べても幸せだし、料理はみんなを幸せにするからやめられない。来世もまた料理やるんだ、私。
【平野レミ(ひらの・れみ)】
料理愛好家・シャンソン歌手。東京生まれ。“シェフ料理”ではなく、“シュフ料理”をモットーに、NHK『きょうの料理』などテレビや雑誌でアイデア料理を発信。特産物を使った料理で全国各地の村おこしにも参加している。『平野レミのつぶやきごはん 140字レシピ』(宝島社)など著書多数。自ら考案した、魚介だしと野菜だしをブレンドさせた本格万能だしパック『わたしの和だし』が発売中。