綱紀粛正の大波は中国で様々な事象を引き起こしている。現地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聰氏がレポートする。
* * *
2013年3月末、安徽省農業科学院副院長であった胡氏の自宅に突然1通の手紙が送りつけられた。
差出人には「私立探偵」と記されてあった。なかを見ると入っていたのは、「これはある人物の依頼であなたを調査した結果である」と書かれたメモと数枚の写真であった。写真にうつっていたのは胡氏が女性とベッドにいるシーンであった。
たが、胡氏には写真に心当たりがなかった。それは当然のことで、実は写真はすべて胡氏の顔を貼り付けて精巧に加工されたものだったからだ。
しかし、何を思ったのか胡氏はこの送り主の指定した口座に”口止め料”として20万5000元(約390万円)を振り込んだというのだ。
それから間もなく、またしても同じ「私立探偵」から連絡があり、胡氏は再び「30万元(約570万円)を支払え」と脅されたのだった。
事態がここに及びやっと警察に通報した胡氏は、なぜ初めから通報しなかったのかと問われてこう語った。
「私立探偵に写真をネットに上げると脅され、そうなったら事実がどうであれ、タダでは済まない気がした」
以上が2015年4月10日に『京華時報』が報じた内容だが、それだけの理由で支払うにしては20万元という金額はあまりに高額ではないか。本当の理由は、これをきっかけにいろいろ調べられることを恐れたのではないかというウワサがネット上で飛び交っている。
同じく3月末には、やはり安徽省の全国銀行業監督管理委員会安徽監管局の元局長が、自宅に入った窃盗団の告発によって汚職で逮捕されるという事件も起きている。また、3月中旬には浮気をしていた銀行の支社長が妻の告発によって汚職の罪で身柄を拘束されている。
どんなところから綻びが出るのか。官僚たちはみな戦々恐々というわけだ。