国内

就活で嘘つくな ブスな優秀ホステスの話をしたら面接で受けた

3月の大学生による就職活動スタートと同時に発売された『内定童貞』(星海社新書)で、就活の欺瞞と問題を暴き物議を醸した中川淳一郎と『傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』で、慶應生、TOEIC950点ながらも就活に失敗した女子の奮闘&再生記を描き話題を呼んだ小野美由紀が、本当の意味で「失敗しない」就活について徹底討論! その第2弾です。『内定童貞』担当編者の今井雄紀も交えての就活談義です。

中川:オレは建前がキライなんですよ。facebookでハロウィンでみんな仮装して写真撮って、それに「いいね!」ってなんなんだよ! カボチャの中にロウソク入れて貧乏臭いじゃねーか! カボチャ一生喰ってろ! みたいな。

小野:笑

中川:それと同じで、就活の実態にしたって、仕事なんてホントはたいしたことねーんだよ! それなのに、就活超大事! これを逃したらチャンスない! みたいに祭り上げられているのはバカか!と。仕事は誰かのためっていうよりも金だろ! って思うし、内定取るのがどうの、就活がどうのっていうのも、建前ばっかり、きれいごとばっかりでふざけんなよ! って思う。オレがこの本を書いたのも、べつに正義感とかはないよ!ただ発注主がやれって言ったからやるんだよ。でも、就活業界のエラい人が書くより、なんの関係もないオレがやったほうが、なんのしがらみも無くあけすけに書けるから書かせてもらったんだよ。

小野:私もそう思います。「傷口から人生。」にも書きましたが、私は就活のシステム自体が悪だとは思っていない。ただ、自分が適応できなかっただけだと思っている。結局は全部、自分が決めるものだもん。適応できない時に、「そこでいつまでも悩んだり自分を責めずに、じゃあどうするのかという選択肢をそこから考えよう」と言う話を書きたかっただけで。

中川:今の就活の、ウソの付き合い、騙し合いみたいな風潮は悪いと思ってる。でも、大きな会社に入るには、現状はどうしたって就活しないといけないんだから、そこはもっと健全化したらいいと思う。

小野:そうですね。そうじゃないと両者しんどいですよね。

中川:面接官がちゃんとした人で、オレの時みたいに、プロレスの話ができたり、素の自分が出せるよう、マッチングがしっかりできていれば良いと思うんだけど。それがなぜか「僕は遊園地のバイトで子供の笑顔に元気をもらいました!人を笑顔にする仕事をしたい、その気持ちが御社の企業理念にマッチしていると思います!」っていう、そもそもウソくさい企業理念に合わせたさらにウソをかぶせた内容になっちゃうんだよ。

小野:振り返れば、私が面接で上手く行ったのって、銀座のホステスやってた時のことを、正直に話した時だけなんですよ。電通の面接なんですけど、最初はとりつくろって「私はNPOのボランティアで広報をやって、参加者を前年度比30%増やしました!」とか言ってるわけ。

でも、面接官が途中からイライラしてるのが分かって、焦れば焦るほど、どんどんずれてって。最後に「あんた結局、何がやりたいの?」って半ギレで聞かれた時に、「ヤバい、もう、どんなにしょぼくても自分の実感のある話をしないと切られる」と思って、観念して「銀座でホステス4年やってたんですけど、すごいブスで何が取り柄なのか分からないおばさんホステスにM銀行の元頭取が何億も貢いでたりとか、マツコ・デラックスみたいな60歳のババアになぜか金持ってるオヤジが入れあげてたりとかしているのを見ていて、理屈じゃ割り切れない人間の感情とか欲で金が動くのが面白くて、そういうのを扱う仕事がしたい」って、なんも考えずにわーってしゃべったら、なぜか面接官が納得していて、コピーライター志望だったんですけど、次の面接に進んだんですよ。

今井:ああ、それは面白いですねぇ。

小野:それを3回繰り返して、でも最後の最後で、偉い人が出て来たとき、つい欲を出して、「わたくしは、NPOでボランティアをしていまして…」みたいな面接に戻したら、アウト。

中川:もったいない。

小野:結局、この時の私はいろんな企業に「イイ顔」して、企業の掲げる理念とかに合わせた都合のいい事言って、それで受かるはず無いのに、それを延々とやってた。ただの「就活やりまん」でした。

中川:面接のやり方自体も、いつできたかわからない。神話みたいなものなんですよ。

今井:西洋に妖精がいて、東洋に妖怪がいる、みたいな…。

中川:企業のほうも「あなたが苦労をはねのけて成功した体験を語ってください」みたいな画一的な質問しかできない。んなもん、学生の身分であれば、ウンコ出ないときに水をいっぱい飲みました! 腹を下したところでドバーッと出て、達成感を覚えました、みたいなことしかねーだろ! それなのに、「仲間とディスカッションしてどうこうしました」みたいな話になる。オレの時ですらそうなっていたからね。面接官だって、そんなこと聞きたいわけじゃないだろうに。見事なまでに「型」というか「作法」に企業も学生もハマってる。企業からすると、後でSNSに悪口書かれたくないから無難なことをしか言わないし、学生は「いい人を装えば通る」って誤解しているから、いかに自分が現代のガンジーみたいなヤツかをアピールする。

小野:「面接を特別なもの」として扱ってるから、お互い本音で聞きたい事も聞けないし、しゃべれなくなってる。面接じゃなくて他の場だったら聞いて良い事でも、面接だとダメになる。面接が神聖化してる。

中川:企業は所詮「お前稼げるの?」って聞きたいだけなんだよ。ビール会社だったら「酒強い?」「得意先、飲ませる人多いよ?」「大丈夫っすよ!」で良いはずなんだよ。

小野:そういえば、この「傷口から人生。」は、第一志望の最終面接の5分前に、企業のエントランスに続くエスカレーターの手前で、パニック障害を起こして、泡吹いて倒れるところから始まるんですけど、あれはリクルートなんですよ。で、この前、この本を読んでくれたというリクルートの人事の人に会って話をしたら、リクルートも採用に苦労しているって言うんです。

「うちは、“明るくて前向きで、リーダーシップを取れるようなキラキラ女子・男子しか採らない”ってイメージが定着しちゃったから、そうじゃない人が受けてくれない。本当はうちに来ないような変わった人が欲しいのに」って。だから別ルートで採用を開拓しているって言ってました。まあ、そりゃそうだろうな……と。

中川:小野さんの「傷口から人生。」は、慶應生でTOEIC950点なのに就活が全敗して無職のまま卒業しないといけなくなった女子学生の失敗譚から始まるけど、そこから徐々に「なぜ私は失敗したのか?」「なぜそんなウソの付き合いをしてしまったのか?」を解き明かしていって、最後には脱出する話だよね。特に、スペインを巡礼しながら、そこで出会った仲間にかけられた言葉で、はっと気づく。人が欺瞞とか建前から抜け出す過程がよく書けているなと思います。

小野美由紀(おの・みゆき)
ライター・コラムニスト
1985年東京都生まれ。慶應大学文学部仏文学科卒業。卒業後、無職の期間を経て2013年春からライターに。幻冬舎プラス「キョーレツがいっぱい」ALICEY「未婦人公論」など、連載多数。2014年12月、絵本『ひかりのりゅう』(絵本塾出版)を出版した。2015年2月、デビュー作『傷口から人生。~メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』を発売。

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト