1980年代の読売巨人軍を支えたのは、エースの座を争っていた“怪物”江川卓と“雑草”西本聖の2人の投手だった。とかくライバル関係ばかり語られる2人だが、西本は江川をライバルと見つつも、常に尊敬の念を払っていたと語る。
「あの人は天才です。並の投手が頑張ってもできないことができた。全力を出さなくても要所を押さえて勝てる。球威、スピード、三振を取る能力では敵わない。だから、自分の武器であるシュートを磨いて、ダブルプレーを取る投球術を確立しました」(西本)
江川、西本とともに、巨人の先発3本柱を形成していた定岡正二が続ける。
「江川卓の凄さは肉体。あれは努力や根性でどうにかなるレベルじゃない。実はあの人は球だけでなく足も速いんです。100メートル走なら松本匡史さんより速かった。
一方の西本はこれと決めた時の頑固さがあった。意外だといわれるんですが、地方遠征でも江川さんとはよく食事に行ったけど西本とは行ったことがないんです。西本は誰かをライバルにして、それを糧にして頑張っていた。意識的に群れなかったんだと思います」
江川と西本のライバル関係には、多くの物語がある。詳細は現在『ビックコミックスペリオール』(小学館)に連載中の漫画『江川と西本』(森高夕次・星野泰視。第1巻発売中)に描かれている。
(文中敬称略)
※週刊ポスト2015年5月8・15日号