「何でもかんでも洗濯機任せでは、汚れが落ち切らないのは当たり前」と、白栄舎クリーニング経営のシミ抜き職人・宇井直樹さん。宇井さんは、シミ抜き流派“不入流”の看板を掲げ、全国のプロのクリーニング店員を指導しながら、高度なシミ抜きや着物のメンテナンスなどを行う。
宇井さんによると、洗濯機はいろいろな素材や形のものを一度に洗っても、それほど衣類が傷まないような、やさしい洗い方に設定されており、すべての汚れに対して万能なわけではないという。
「洗濯は本来、素材などを見分けて、一品一品洗うものです。とくに昨今は新繊維が次々開発され、個性豊かな素材が多いので、すべてを同じ洗い方できれいにするのは至難の業。たとえば、繊維の奥に入り込んだ泥汚れは、ブラシでこするなど、やはり力わざを使わないと、なかなか落ちないものなのです」(宇井さん、「」内以下同)
とはいえ、ひとつひとつ手洗いするわけにもいかない。最低限したいのは、洗濯前の衣類の仕分け。このひと手間で、汚れ落ちに差がつくのだ。
「似た素材・形・色で分けたり、油・泥など、汚れ別に分けるなどを。1度ですべてを洗おうとせず、1回の洗濯量は少なめに、数回に分けて洗うのが理想的です」 さらに、知っておきたい3常識もチェックだ。
新常識その1は、「“洗濯表示”はうのみにしない」こと。仕分けの際に参考にしたいのが“洗濯表示”。だが、これらはアパレル業者が決めるため、洗濯のプロからみると“?”なことも。
「水洗い表示が×のものは、基本的にクリーニング店に出してほしいもの。ただし、なかには例外もあります」。
その2は、「水洗いできないものはない」と心がける。
「プロの技術をもってすれば、水洗いできない素材はほとんどありません。革だって、牛や馬が雨にぬれても大丈夫なのと同じで、実際は洗えます。『洗う=洗剤を使う』と考えがちですが、さっと水にくぐらすだけで汚れが落ち、“洗えた”ことになる素材も。ただし、革などは素人が気軽に手を出すと色落ちや型崩れしてしまう可能性が高いという理解を」
その3は、「クリーニング店を過信しない」。
「色落ちや型崩れによるクレームを防ぐため、洗濯表示以上のことはやらない店も多いんです。クリーニング店なら、どんな汚れも落としてくれると思ったら大間違い。手間のかかるシミ抜きを依頼した際に、リスク説明をしてくれたり、安請け合いしないような信頼できる店を見つけてください」
※女性セブン2015年5月14・21日号