死者が7300人を超え、さらに増え続けているネパールの大震災。5月5日時点で日本人の死者は登山中に雪崩に遭遇した1人のみで、在留邦人約1100人は無事だった。現地駐在の日本人ビジネスマンがいう。
「ネパール人は平均年収3万6000円と貧しく、滞在する外国人と生活環境に格差がある。日本人は主に首都カトマンズのタメル地区やパタン地区といったインフラの整った地域の鉄筋を使った頑丈な家に住んでいる。一方、ネパール人の住居は瓦を積んだだけの細長いアパートが多く、多くが地震で半壊・倒壊した」
その一方で、現地の日本人コミュニティでは、地震発生時の日本大使館の対応に疑問の声が上がっている。
「震災直後、若い日本人女性が赤ちゃんを連れて“避難したい”と大使館を訪れたが、最初は拒否。食い下がると入れたが、『特別に入れるが何の世話もできない。大勢来ると困るので他言しないでほしい』と言い添えられた。その後に30人ほどが避難してきたが、水ももらえなかった」(同前)
オーストラリア大使館が自国民に“大使館に来るように”と呼びかけ、館内にパーソナルスペースも設けた対応とは雲泥の差だった。
ところが地震から4日も過ぎた4月28日に突然、水やマット、毛布が配られたという。それが在留邦人の間で「その日、NHKの取材が来るので慌てて手厚くしたらしい」と噂された。日本大使館に尋ねた。
「設備や物資が十分でないので“ホテルなど宿泊施設に泊まってほしい”と案内したが、発生当日から避難所として開放はしていた。収容人数が少ないので呼びかけはできなかった。28日頃から物資が届き始めたので避難者に配れただけで、NHKの取材とは関係ない」
テロや事件・事故、災害のたびに指摘されることだが、日本の在外公館は常日頃、国民の税金をワインや召し使いに注ぎ込みながら、一体何を守っているのか。
※週刊ポスト2015年5月22日号