現在放送中の『まれ』でシリーズ92作目となるNHK連続テレビ小説。ヒロイン・土屋太鳳の好演が話題となっているが、シリーズを振り返れば、様々な新進女優たちがヒロインに大抜擢され、一躍スターダムの階段を上り詰めていった。朝ドラヒロインの魅力について、コラムニスト・ペリー荻野氏が解説する。
* * *
「朝ドラ」こと、NHK「連続テレビ小説」が昭和36年に放送を開始してから今年で54年。歴代ヒロインの多くは朝の空気にふさわしいフレッシュな新人だ。見せたおでこも初々しい庶民派美人が目立つ。
昭和41年放送の『おはなはん』では、底抜けに明るい女主人公・はなを劇団民藝の新人・樫山文枝が演じ、最高視聴率は56.4%を記録。さわやかで親しみやすい「朝ドラ」ヒロインの原型を作った。その後も庶民派ヒロインの系譜は『澪つくし』(昭和60年)の沢口靖子らに続いていく。
一方で新しいヒロイン像も生まれた。家庭を守る女性から、仕事を持つ女性が主人公に。『雲のじゅうたん』(昭和51年)では女性飛行士まで登場。そしてバブル以降は豊かな時代の「自分探し女子」のヒロインも増えた。
朝ドラの脚本家に「コツは15分の中に毎回必ず山場を入れること」と取材で聞いたことがある。放送は月曜から土曜まで週6本分。撮影はハードだ。視聴者は娘を育てるような目線で、頑張るヒロインとともに葛藤したり、喜んだり。一般家庭にもちょっとしたドラマを起こしてしまう、それが「朝ドラ」なのである。
※週刊ポスト2015年5月22日号