大阪市を廃止し、5つの特別区に再編する大阪都構想の賛否を問う住民投票が5月17日に迫るなか、橋下徹・市長率いる大阪維新の会のPR作戦がますます熱を帯びている。
「GW中、どこに行っても橋下の顔、顔、顔。『もうええわ』とうんざりするほど見た」(大阪市在住の男性)
テレビでは「CHANGE OSAKA! 5・17」と書かれたTシャツを着た人たちが次々と「チェンジ、大阪!」を連呼し、最後に橋下市長が「都構想で大阪をもっと住みやすく」と語るCMを繰り返し放映。市内にはラッピングトラックが走り回り、大型看板が10か所に設置されるなど、どこへ行っても住民投票の宣伝と鉢合わせる。
今回の住民投票は公職選挙法に準じた扱いで実施されるため、有権者への飲食の提供や戸別訪問は禁じられる一方で、特定の候補者がいないためCMやチラシ、看板の数量については実質無制限。メディア戦略に長けた橋下市長はここが勝負所とみて、告示直後から大量にCMを打っている。
維新の会が投入する住民投票の広報予算はおよそ5億円。国政政党である維新の党が得た政党助成金や維新の会への個人寄付から捻出している。まさに党を挙げての全力投球だ。
「テレビCMの他にもTシャツ、エコバッグなどのグッズ製作にも充てられています」(維新の会広報担当者)
市側もポスターやビラなど住民投票の啓発活動の費用に1億5000万円の予算を計上しており、「会場設営などの費用を含めると約7億4700万円」(大阪市選挙管理委員会)というカネが今回の住民投票に注ぎ込まれている。
橋下市長が物量を使って“市民洗脳作戦”を進める一方で、自民・公明から民主、共産に至る“反・維新連合”は出遅れている。「告示期間の後半に反都構想CMを集中的に流す予定」(自民党府議)というが、肝心の「都構想のデメリット」については明確な論拠を提示できていない。
「反対派は『市内全域で使えた保育所が特別区をまたぐと使えなくなる』『救急車が来なくなる』など住民サービスの低下を訴えていますが、いずれも根拠を示せていない。
公選の区長らの競争が生まれるため、逆にサービス向上につながる。大阪市議会議員の身分を失い、かつ5特別区全体の議員定数が市議会時代より減ることを恐れているのでしょう」(維新の党関係者)
イメージ戦略に走る維新側と、呉越同舟の“とにかく反対”派の戦い──大阪市民は何が争点か見えないまま、大阪の未来を投票に託すことになる。
※週刊ポスト2015年5月22日号