国際情報

AIIB創設の目的に外貨稼ぎ 背景に中国の経済成長の落ち込み

 融資基準や参加国の発言権など、具体的なことが明らかにされていない中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、なぜ誕生することとなったのか。習近平国家主席ら中国指導部を突き動かしているのは、AIIBを利用して減速傾向が著しい中国経済を立て直すという私利私欲だけなのだ。ジャーナリストの相馬勝氏が、その正体を暴く。

 * * *
 AIIBの創設の経緯について、北京の外資系金融関係筋は中国政府の金融部局の幹部の話として、次のように解説する。

「2008年のリーマンショック後、中国経済への影響も避けられないと見て、当時の習近平副主席を中心に対応策が検討された。特に多くの中国企業が関与している途上国のインフラ開発の停滞を防ぐ方策が話し合われた。当初は世界銀行やアジア開発銀行、国際通貨基金(IMF)などの既存の国際金融機関に働きかけて、途上国へのインフラ開発資金の融資額を増やそうとしたが、らちがあかなかった。

 このため、習氏やそのブレーンがたどり着いた結論は『中国が自ら途上国向けの国際的な金融機関を創設してしまおう』ということだった」

 同筋によると、世銀は米国主導で総裁は米国人、ADBは日米両国が主導権を持ち総裁は日本人、IMFも米国主導で総裁は欧州人。しかも、融資の審査が厳格なだけに、アジアなど新興国への多額の資金貸し付けは不可能だ。

 このため、習近平はAIIB創設を決め、AIIBの創設を発表する場を慎重に選んでいった。

 北京の国際金融筋は「AIIBにせよ、一帯一路(※陸と海のシルクロード)構想にしても、ここ数年の中国の経済成長の落ち込みが背景にある。今年は7%成長の実現すら危ぶまれており、確実に中国経済は悪化している。これに歯止めをかけるために、中国が近隣諸国のインフラ投資に乗り出し、外貨を稼ぐ目的がある」と指摘する。

 この言葉通り、過剰在庫の山を築いている鉄鋼やセメント、建材などをインフラプロジェクトに転用して国内在庫を一掃するとともに、数千万といわれる失業者の雇用形成のチャンスも拡大するというメリットがある。要は「すべての道は北京に通じる」という中華思想の産物といってもよいのだ。

※SAPIO2015年6月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン