【書評】『PARマンの情熱的な日々 どこへでも飛んでいく編』藤子不二雄(A)著/集英社/1600円+税
【評者】坪内祐三(評論家)
書評の世界で私が不満に思っているのは、コミックエッセイは一つのジャンルとして確立しているのに(例えば私はグレゴリ青山のファンだ)、その種の本が書評で殆ど取りあげられないことだ。
だから私はこの『PARマンの情熱的な日々』に神保町のゴヒイキの店で初めて出会った。そして帯に「待望の第4弾!!」とあるので驚いたが、その店はマンガ関係がさほど揃っていないので、三省堂書店に向かった。
三省堂書店本店のマンガコーナーはとても充実しているのだが、今度は広すぎて自分で探せず、検索機に頼ってようやく残りの三巻をゲットした(第一巻は二〇一〇年の九月に刊行されていた──ということは私は四年半も知らずにいたのだ)。
いやぁ、期待通りと言おうか、期待以上の面白さだ。本書の見どころ読みどころはたくさんあるが、その内の一つは著者が大のパーティー好きなことだ。『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦のパーティーにも出かける。「ワシはあまり荒木飛呂彦さんとおつきあいがない。それなのに何故でかけたのか」。それは『ジョジョの奇妙な冒険』が大好きだからだ。
だが超満員の会場で、「ワシの知っているヒトは誰もいない」。もう帰ろうかな、と思っていたら、知人を一人見つけた。しかも彼は手招きをしてくれている。「あのちばてつや氏!!」だ。そして壇上で荒木飛呂彦と対面し、スピーチをした。
私の世代にスタジオゼロの名前は懐かしい。テレビアニメの『オバケのQ太郎』を製作していたスタジオだ。今の仕事場はそのスタジオのあった新宿十二社の近くにあるから出勤途中にその跡地(当時は四階建てだったが今は十四階建てのビルになっている)を通るたびに思い出がわいてくる。オバQを始めとするヒット作の連発で最盛期には八十名もいて、屋上にまで部屋を作ってしまう。
ところで連休の読書タイムに読んでいる本がWゴールディングの『蠅の王』であるのがシブい。
※週刊ポスト2015年5月22日号