国内

村山談話 国会決議を阻止した当人がその意図と経緯を語った

村山談話の国会決議を阻止した村上正邦氏

「一強多弱」の政界で、安倍晋三・首相の政権運営に正面切って異を唱える勢力はない。それは、安倍首相による「戦後70年談話」についてもそうだ。こんな時こそ本誌名物、もはや怖いもののなくなった老人党座談会の出番だ。政治と戦争を体験した村上正邦(82歳・元自民)、矢野絢也(83歳・元公明)、平野貞夫(79歳・元民主)の3氏が「談話」について語り合った。

──安倍首相は1995年の村山談話とは文言を変えた戦後70年談話を発表しようとしていますが、村山談話はどういった経緯で出されたのでしょうか。

村上:村山富市さんは純粋な方でね。自・社・さの連立政権の総理に推された時に、なぜ大臣もやったことのない、官邸にも行ったことのない自分が総理になるのかを真面目に考えた。翌年がちょうど戦後50年という節目の年だった。そこに必然的な意味があって、日本がけじめをつけるための天命であると考えて総理を引き受けたわけです。

 まあ、村山さんを担いだ自民党側は、悪人どもがいろいろ知恵を巡らせたんでしょうな。戦後50年とかどうでもよくて(笑い)、とにかく政権に復帰するために亀井静香らが村山さんを担ぎ出した。ただ、村山さん自身はもっと純粋に考えていた。

矢野:今も村山元首相は、日本はこれでいいのかという気持ちで、村上さんや私などの議員OBでつくる「さとやま・草莽(そうもう)の会」という政治の勉強会の筆頭呼びかけ人にもなっている。

村上:そうなんです。村山さんはもともと戦後50年のけじめを談話ではなく、国会決議でやろうとしていたんだよ。当時の自民党政調会長は加藤紘一、幹事長は森喜朗。加藤が遺族会とか靖国関連とか、決議文に反対しそうな団体に根回しした。それで大丈夫そうだってことで自民党の役員会を開いたら、どっこい、私が反対した(笑い)。

平野:そうそう。

村上:何で反対したかというと、ここに決議文があるんだけどね(と紙を出す)。日付は平成7(1995)年6月9日。

〈世界の近代史上における数々の植民地支配や侵略的行為に思いをいたし、我が国が過去に行ったこうした行為や他国民とくにアジアの諸国民に与えた苦痛を認識し、深い反省の念を表明する〉

 これだと「こうした行為」は、「植民地支配」や「侵略的行為」を指すわけで、あまりに自虐的すぎる。だから、「こうした」という四文字を外せと主張した。役員会は紛糾して、私があんまり頑張るから、みんなうんざりしていたよ。結局、四文字を外すことになったんだが、印刷物で回ってきた決議文を見たら外れてない。翌日の衆議院でそのまま決議されたんだ。

 騙されて頭にきたからね、絶対に参議院では決議させないと決めた。私は参議院の自民党幹事長だったから、もう歯牙にもかけなかったよ。国会決議は衆参両院で決議しないといけないから、流れたんです。それで村山さんは首相談話という形で発表することになった。

関連記事

トピックス

“激太り”していた水原一平被告(AFLO/backgrid)
《またしても出頭延期》水原一平被告、気になる“妻の居場所”  昨年8月には“まさかのツーショット”も…「子どもを持ち、小さな式を挙げたい」吐露していた思い
NEWSポストセブン
露出を増やしつつある沢尻エリカ(時事通信フォト)
《過激な作品において魅力的な存在》沢尻エリカ、“半裸写真”公開で見えた映像作品復帰への道筋
週刊ポスト
初めて万博を視察された愛子さま(2025年5月9日、撮影/JMPA)
《万博ご視察ファッション》愛子さま、雅子さまの“万博コーデ”を思わせるブルーグレーのパンツスタイル
NEWSポストセブン
憔悴した様子の永野芽郁
《憔悴の近影》永野芽郁、頬がこけ、目元を腫らして…移動時には“厳戒態勢”「事務所車までダッシュ」【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
尹錫悦前大統領(左)の夫人・金建希氏に贈賄疑惑(時事通信フォト)
旧統一教会幹部が韓国前大統領夫人に“高級ダイヤ贈賄”疑惑 教会が推進するカンボジア事業への支援が目的か 注目される韓国政界と教会との蜜月
週刊ポスト
現行犯逮捕された戸田容疑者と、血痕が残っていた犯行直後の現場(左・時事通信社)
【東大前駅・無差別殺人未遂】「この辺りはみんなエリート。ご近所の親は大学教授、子供は旧帝大…」“教育虐待”訴える戸田佳孝容疑者(43)が育った“インテリ住宅街”
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン