5月2日、午前8時34分にシャーロット王女を出産し、同日18時過ぎに退院した英・キャサリン妃。2013年7月に第一子・ジョージ王子を出産した際は26時間後の退院で、これでも早かったが、今回はさらに3分の1近くの時短となる。
英王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんは、「英国では日帰り出産は当たり前」と指摘する。
「そもそも英国では、出産後すぐ帰宅してリラックスすることを望む女性が多い。専門の看護師や保健師が家庭訪問して母子の健康を確認するなど、豊富な産後サービスもスピード退院を後押ししています」
静岡県磐田市の産婦人科「あんずクリニック」の川島正久院長は、英国の国営保健サービス「NHS」も素早い退院の理由だという。
「NHSは、検査や治療を全額国費にする代わりに、無駄を省くため、入院日数を極力短くします。キャサリン妃はNHSを利用していませんが、王室も国民と同じように医療費を節約するという姿勢をアピールするため、即日退院したのでしょう」
日本でも日帰り出産は増えているのだろうか。
「物理的には可能ですが、実行する妊婦はほとんどいません」(川島院長)
日本の出産後の入院日数は、通常4~6日ほど。日帰り出産はきわめてまれだ。要因は、麻酔で痛みを抑えながら出産する「無痛分娩」が普及していないことと、日本の慣習や文化的なものが大きい。
キャサリン妃が無痛分娩だったとの公式発表はないが、欧米では母体の負担が軽く、出産後の回復が早い無痛分娩による出産が主流。そのため日帰り出産が多いのだ。
「日本では医療の介入のない自然なお産が良い、という考えが根強い。しかも無痛分娩ができる施設が少なく、なかなか数が増えません」(川島院長)
海外では半数以上が無痛分娩の国もあるが、日本は全体の3~4%程度とされる。麻酔管理のため普通分娩より10万円以上高額なことも普及を阻む一因という。また周囲のサポート不足も入院が長期化する要因となっている。
「日本の夫は仕事が忙しく、なかなか育児をサポートできない。そのうえ父母が遠距離在住などで支援が望めないと、出産後もできるだけ長く病院にとどまりたいという女性が多くなります」(川島院長)
英国の一般国民は前述の通り、国営サービスのNHSを利用すれば出産費用は原則無料。ダイアナ元皇太子妃が2人の王子を産んだことで知られる私立・セント・メアリー病院を選んだキャサリン妃はもちろん有料だった。
「最高の医療チームがキャサリン妃をサポートした。同病院の通常費用は、出産費を含めて最低1泊6000ポンド(約110万円)です」(多賀さん)
※女性セブン2015年5月28日号