4月26日以降、火山性地震が1000回を超えた箱根山では、泉質の変化、山頂に亀裂が入った、鹿や熊が逃げ出し始めたなど、数々の異変が起きている。神奈川県箱根町仙石原の旅館「箱根温泉山荘なかむら」の従業員はこう話す。
「いきなり黒い湯が出てきたんです。36年間営業してきて、こんなことは初めてです。うちの温泉は大涌谷の源泉から湯を引いてるんで、やっぱり火山活動の影響で土や灰が混じったのかな…」
気象庁は5月6日、噴火の危険度を5段階で示す「噴火警戒レベル」を「1(平常)」から「2(火口周辺規制)」に引き上げ、これに伴い蒸気噴出が確認されている大涌谷の遊歩道は全面閉鎖された。
気象庁は噴火の危険性について、あくまでも大涌谷周辺の「小規模噴火の可能性」と位置づけ、「直ちに噴火する兆しはない」としているが、自然は常に人知を超えるものだ。武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏はこう話す。
「レベル2だからまだ大丈夫という話ではないんです。そもそも現在の学問では、噴火予知は不可能に近い。世界的に見ても、予知できずに噴火したケースの方がはるかに多いんです。実際、昨年は御嶽山が警戒レベル1であれだけの噴火をしていますからね。極端な話、箱根山はいつ噴火してもおかしくない」
とくに箱根山は直近の噴火が3100年前であり、噴火前後の観測データがないことが問題になっている。
「過去のデータがないので、前兆となる地震運動から噴火規模を予測することができず、今後、どれほどの規模の噴火が起きるかわからないんです」(前出・島村氏)
箱根町は年間2000万人の観光客が訪れる全国有数の温泉地。もし噴火すれば甚大な被害は避けられない。しかも箱根山の噴火が、“最悪のケース”を招く可能性も指摘されている。
「60万年前、火山島だった伊豆半島が日本列島にぶつかり、その時に地下にマグマが生まれて富士山と箱根山ができました。2つの山はいわばきょうだいの関係で、距離も25kmしか離れていないので、どちらかが噴火すれば、連動してもう片方も噴火する可能性があるんです」(前出・島村氏)
※女性セブン2015年5月28日号