現在の日本経済の構造的な問題点を抉り出した大前研一氏の新刊『低欲望社会──「大志なき時代」の新・国富論』(小学館)が話題を呼んでいる。大前氏は若者の“低欲望”に一定の理解を示すも、「大志なき若者」の存在を憂いている。その原因はどこにあるのか? 大前氏はこう説明する。
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戦後日本の教育は、資源も食料もない日本は外国から資源を輸入し、それを加工して輸出する「加工貿易立国」で稼ぐしか生きていく道はない。「働かざる者、食うべからず」──と教えていた。このことを私たちの世代は小学校で耳にタコができるほど聞いていた。
その結果、誰もが必死に働き、日本は世界に冠たる輸出大国になって高度経済成長を遂げたわけだが、「働かなければ食えない」という危機感がなければ、大志を抱くこともできない。もちろん、今でも大志を持っている若者はいるが、その絶対数は昔に比べると大幅に減少している。
そうなった最大の理由は、一人っ子が過半数になって家庭内で競争がなくなった上、偏差値教育によって学校のクラスの中でも競争がなくなったからである。つまり、偏差値を与えられると、あたかも自分の能力がその程度であるかのように思い込み、予定調和してしまうのだ。
しかし、若者は「自分には才能があるはずだ。それはいつどこで開花するかわからない」と思って努力し続けなければならない。そうでないと目線が下がってアンテナの感度が悪くなり、目の前にチャンスが訪れていても、ものにできなくなる。
※週刊ポスト2015年5月22日号