アメリカ演劇界の最高の栄誉である『トニー賞』。現在NYで上演中の『王様と私』に主演している渡辺謙(55才)が、故・ナンシー梅木さん以来、日本人としては56年ぶりに主演男優賞にノミネートされた。
この快挙について、アメリカのショービズ界に詳しいジャーナリストの佐藤友紀さんがこう説明する。
「トニー賞には大きくわけて演劇とミュージカル部門があって、それぞれ新作とリバイバル作品について選ばれます。今回の渡辺さんは、作品としてミュージカルのリバイバル部門で評価され、作品もこの部門の候補となったんですけど、主演男優賞としては、新作とリバイバル作品を合わせたカテゴリーから選出されるので、よりハードルが高かったんですよ」
ちなみにトニー賞には決まり事もある。
「大きなものでいうと、1か月近い予備公演となるプレビュー段階では正式な批評は出してはいけません。今年のアカデミー賞で4部門に輝いた『バードマン』でも、主人公が恐れる『ニューヨーク・タイムズ』紙の女性演劇コラムニストが登場していますが、彼らが厳しい批評を載せたことで、上演が短期間で終わってしまった作品が過去には数多くあります」(前出・佐藤さん)
今回の渡辺は、プレビュー(3月12日~4月15日)を見た人たちから「何を言っているかわからない」「演技がかたい」などとインターネット上で酷評され、本公演スタート翌日の新聞などでも辛口のコメントが並んでいたが、公演を重ねるごとに評価が高まっていったようだ。
実際公演を見た前出の佐藤さんが振りかえる。
「意外なくらいに多い台詞は、確かにネイティブのように流ちょうとまではいかないし、歌も手慣れた歌手の歌唱ではないけれど、圧倒的な存在感、演技力、目力が観客をグイグイ引き込んでいくようでした。特にケリー・オハラと“シャル・ウィ・ダンス”を踊り回るシーンでの彼の歌唱は自信に満ち溢れていて艶やかで、なんとダンスの途中で客席から大拍手が起こったほどです。『ニューヨーク・タイムズ』紙や『タイム・アウト・ニューヨーク』誌には“セクシーだ”との表記も見られましたが、このシーンだけとっても渡辺さんの起用は大成功だったといえるのではないでしょうか」(前出・佐藤さん)
2005年12月、渡辺と再婚した南果歩(51才)は、ちょうどプレビューが始まった頃、ドラマ『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)がクランクインした。しかし…。
「南さんは渡辺さんが舞台に立つ準備段階から、何度も渡米して彼を支えたんですよ。本公演が始まるまでに8回は公演を見ていましたし、撮休で少しでも時間ができるとNYへ飛んでいます。ついこの前日本で会ったばかりなのに、電話すると“今日はNYなの”と言ったりするから、本当にびっくりしますよ。現在、トニー賞ノミネートのニュースもあってチケットがなかなか取れない状況なんですが、南さんは“私に言って”となんとかチケットを手配してくれたりもするみたいです」(芸能関係者)
※女性セブン2015年5月28日号