中国の大規模な政治運動「文化大革命(1966~1976年)」で粛清された劉少奇元国家主席の娘、劉愛琴さんが中国紙「新京報」の単独インタビューに応じ、文革中に拷問を受けた記憶などを生々しく語るとともに、「普通の家に生まれていたら、父が悲惨な死に方をするなど、こんなに苦しまなくて良かったのに…」などと涙ながらに述べた。
愛琴さんは1927年生まれで、現在88歳。小さいころ、父の劉少奇は革命運動で忙しく、愛琴さんが12歳の1939年から新中国建国の1949年の10年間、旧ソ連の共産党機関に預けられ、モスクワから300kmほどの養護施設で育てられたという。
その時の印象について、愛琴さんは「いつもひもじい思いをしていて、冬の間は本当に寒かったことを覚えている」と話している。
22歳から劉少奇らと一緒に暮らすようになり、人民大学に通うなどの穏やかな生活が始まったが、1966年に文化大革命が始まると生活が一変。同年7月初め、北京・中南海の自宅に紅衛兵が押し寄せ、両親を連れ去っていったのが、永遠の別れになってしまった。
その後、愛琴さんと兄と弟の3人は内蒙古自治区に連れて行かれて、拷問を受ける毎日を送る。文革では愛琴さんも「ソ連のスパイ」などと批判を受け「歯から血が流れ、腰がおかしくなり失禁」するほどの暴行を受けた。その後、毎日、工場のトイレ掃除を強いられたという。
留学先のソ連から帰国した兄は同自治区包頭市内で、線路に身を伏せて自殺。弟は8年間、身柄を拘束されつるし上げの毎日で、解放されて数年後に1人暮らしの農家で息を引き取った。
劉少奇は党籍を永久剥奪され1969年、河南省で農民の「劉衛黄」として病死したが、1980年に名誉回復された。
愛琴さんは「子どもには政治から遠く離れていてほしい。平穏に楽しく暮らすことができればそれでいい」と語るとともに、「だれかを恨んでいるか」と尋ねられ、「だれを恨めばいいのか。だれも怨んでいない。時代がもたらした悲劇だ」と涙ながらに答えた。