「またこぼしちゃったんか~い!」
食卓で飲み物をこぼした赤ちゃんに、笑顔でツッコむ――芸人兼主夫の中村シュフ(35才)が実践している「ツッコミ育児」の1コマだ。
「赤ちゃんがおみそ汁や飲み物をこぼすのは当たり前です。だったら不必要にイライラしないで、ツッコミを入れるなど、おもしろく育児をしていったほうがストレスにならずに楽しめる」(中村、「」内以下同)
笑顔でそう語る彼は、ピン芸人でありながら、家庭では大学の家政学部卒業のキャリアを生かし、家事の一切を切り盛りしている主夫だ。自らを「主夫芸人」と名乗り、フルタイム勤務の妻を支え、3才と0才の女の子の育児にも奮闘している。
そもそも彼が主夫になったのは、7年間交際していた彼女からの「家庭に入ってほしい」というプロポーズがきっかけだった。
「芸人という不安定な仕事のぼくを支えてくれた彼女の大きな決断に『ふつつか者ですがよろしくお願いします』と二つ返事で受けました」
漫才コンビ日本一を決める『M-1グランプリ』準決勝に進出したことがあったキャリアをいったん捨てて、主夫の道に進んだ。主夫業を始めてまず実感したのは「家事には流れがある」ということだ。
「例えば、料理は調理だけでなく、献立決めや買い出しなど一連の“動作”があります。多くの旦那さんは、料理を作りさえすれば家事を手伝ったと思い込みがちです。後片づけのことを考えなかったり、食材を過剰に余らせてしまったり…それでは家事の流れを乱してしまうんですよね。そうしたお手伝いは主婦にとってありがた迷惑なだけだと学びました」
中村はそうした夫を持つ主婦に、こんなアドバイスをする。
「『お皿を洗い場に運ぶだけお願い』『洗濯物を取り込むだけで助かるわ』など『だけ』という言葉を使って、夫にお手伝いをしてもらうようにしましょう。具体的な指示をして家事の流れの一区間をしっかり手伝ってもらうことで、その後の家事がスムーズにいきます」
また中村は、夫に気持ちよく家事を手伝ってもらうために、機嫌をとるのも重要と話す。
「ぼくの場合は妻ですが、朝仕事に行き、夜に帰ってきます。ぼくは、朝と夜で妻に対するトークのポジションを変えています。
朝は話し手になって、眠そうな妻に『近所に雑貨屋さんができたんだよ』などと話しかけて、頭を覚醒させ、笑顔で会社に行けるようにします。
夜は聞き手に徹します。会社の愚痴や不満を一方的に聞きます。みなさんもダンナさんのキャラクターや生活スタイルに合わせた方法で機嫌をとっていきましょう」
家事を義務と思わず権利と思うことで、楽しみながら家事ができるという。
「日々の雑務と夫の世話で、主婦の仕事を義務ととらえがちです。そうではなくて、家事を切り盛りする権利が主婦にはある、と考えてほしい。“主婦権”という概念があるくらいです。本来家事は家庭を楽しく過ごせるようにするものだと思います」
※女性セブン2015年5月28日