大相撲夏場所は初日(5月10日)から波乱の展開だった。結びの一番、白鵬が3年ぶりに初日に黒星。破ったのは同じモンゴル人力士の小結・逸ノ城だ。過去4回の対戦で4敗していたが、白鵬がもろ差しになった瞬間に右からの突き落としで初勝利を収めた。
その直後の支度部屋では珍しい出来事が起きた。白鵬が記者たちに対して、「恩返しされたね」と発言したのである。
「驚きましたよ。先場所まで支度部屋でも壁を向いて一言も口を利かず、報道陣との関係が改善されたわけでもないのに……。元々話し好きの人ですから、負けて動揺して“素”が出てしまったのでしょう。徹底的にかわいがっていた相手からやり返されたんですからね」(相撲担当記者)
白鵬は先月末の夏場所の稽古総見で、逸ノ城を申し合いやぶつかり稽古で転がし、頭からつま先まで砂まみれにしていた。
「これは実力のある若手に対して恐怖心を植え付け、本場所で有利に立つため。また、同時に上下関係を示す狙いもある」(若手親方)
白鵬はこの逸ノ城に加え、今場所で大関取りを狙う関脇・照ノ富士という2人の出世頭に対して特別な意識を持っている。彼らが同じモンゴル人でありながら、白鵬が束ねる派閥から外れ、母校・鳥取城北高出身者で固まっているからだ。
だからこそ力を見せつけたかったが、反対にやられて「横綱は明らかに焦っている」(前出の記者)という。
※週刊ポスト2015年5月29日号