4年前の東日本大震災の津波被害で、データは消えても多くのプリント写真ががれきの中から発見された。そういう意味でも、プリント写真のよさが見直されているが、写真は人との絆を強めてくれると語るのは、写真修復師の村林孝夫さん。2人の娘のアルバム作りに熱中した時期があった。
「旅行の写真なら、背景が観光名所の写真に加え、特に印象に残った表情や食べ物も選ぶと、旅の思い出が鮮明によみがえります。メインのアルバムには入らなくても、寝ぼけた顔もいとおしいのが親心。そういう写真を集めていたら、中学生の当時は“嫌がらせ写真だ”と怒っていましたが、大人になってからは感謝され、嫁入りした今は娘の手元にあります」(村林さん、以下「 」内同)
色あせたモノクロ写真を化学の力でよみがえらせる技術は、世界一と称される村林さん。写真修復師になったきっかけは、広告写真家の先駆者だった父の遺言と語る。
「父が撮ったお気に入りの作品が劣化してしまい、何とか元に戻してほしいと亡くなる1週間前に頼まれたんです。それから苦節10年かけて成功しました。その時の喜びを他の人にも味わってもらいたくて。写真は化学反応で絵をだすので、破れなど物理的な劣化でなければ、修復も化学の原理でできるんです。ご両親の写真や社史用の写真で依頼を受けることが多いですね」
写真の修復には井戸水を使用する。
「年間で水温が安定し、弱アルカリ性なので、水道水より適しています」。
現在、修復の依頼はホームページで受け付けている。戦時中頃の2L判以下の写真の修復で1枚2万1000円程度。
※女性セブン2015年5月28日号