東京商工リサーチが公表した「2014年全国女性社長調査」は、本誌5月1日号で紹介した日本全国269万人に及ぶ社長の出身地や出身校を抽出・集計したビッグデータを女性社長に特化してまとめたものだ。調査によると、全国の社長全体に占める女性の割合は11.5%に達し、女性社長の人数は2010年調査時の21万人から31万人に増加した。
また、女性社長数と企業数を対比した「女性社長率」が最も高い産業は「不動産業」の21%で、実に5人に1人が女性社長だ。「女性職場」のイメージが薄い業界だが、女性社長の多い理由を経済ジャーナリストの溝上憲文氏はこう解説する。
「地方の不動産業は、土地持ちの地元名士が開業しているケースが圧倒的に多い。これまでは頑なに『跡継ぎは男』という家が少なくなかったが、少子化の影響もあって、娘が同族継承するパターンが増えています」
「事業継承」による女性社長の増加を端的に示すのが出身大学別のランキングだ。
出身大学で最も多かったのが日本大学(272人)、2位は東京女子医科大学(232人)、 差で3位に慶応義塾大学(228人)、4位は早稲田大学(200人)、5位の青山学院大学(187人)と続く。
1位の日大は男性でもトップ。マンモス校であることと、地方系列高校からの内部進学者がUターンして事業継承していることが主な理由と考えられる。特筆すべきは2位に輝いた東京女子医科大学だ。
『時間と学費をムダにしない大学選び』(中央公論新社)の著者で大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は、同大学出身の「女性開業医」の多さがランキング上位に入った要因だと分析する。
「東京女子医大は日本に存在する唯一の女子医科大学です。開業医の娘である学生が、卒業後に実家の医院を継ぐケースが多いと考えられます」
さらに、女性医師の場合は新規の開業も多いとされる。産婦人科や美容整形外科など、患者の大半が女性となる診療科では、「女性がトップ」である病院やクリニックは大きな信頼と安心感を生むからだ。
※週刊ポスト2015年5月29日号