『半沢直樹』で嫌味な浅野支店長役を演じ、注目を浴びることとなった俳優・石丸幹二(49才)、もともとは劇団四季の看板俳優だ。本番前は声もかけられないくらい集中していたが、終わったとたん笑顔で話してくれる。そんな実力派俳優のターニングポイントとは? 石丸に密着した。
劇団四季に17年間在籍し、歌も演技もこなせる看板俳優として活躍。端正なルックスも相まってミュージカルファンの間で絶大な人気を誇っていた、石丸幹二。広く知られるようになったのは、超高視聴率ドラマ『半沢直樹』(TBS系)の、憎たらしい“浅野支店長”役だった。
「あの作品に出させていただいたことは、私の役者人生にとって大きな出来事だったと思います」
現在は『アルジャーノンに花束を』(TBS系)で天才脳医学者・蜂須賀を、大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK)では長州藩の重臣・周布政之助を演じ、公開中の映画『王妃の館』では、なんとルイ14世に扮するなど、引っぱりだこの石丸には、何度もターニングポイントがあったという。
「最初は、高校時代に学んでいたチェロをあきらめ、東京音楽大学でサックスを専攻しようと一大決心したこと。それなのに、音大時代にジェシー・ノーマンが歌う姿をテレビで見て衝撃を受け、東京藝術大学の声楽科を受け直したんです。これが、2つめのターニングポイント」
在学中に劇団四季のオーディションを受けて合格。『オペラ座の怪人』で主要キャストに抜擢されてデビューする。
「3つめのターニングポイントは劇団を辞める決心をしたときですね。20代30代は舞台役者として全速力で走り続けていたのですが、40才を過ぎたころに気力と体力のズレを感じ始めたんです。レースから降りて考え直そうかな、と思ったのが41、42才のときでした」
2007年末に退団。2009年からフリーの俳優として再出発し、2013年、『半沢直樹』と出合うことになる。
「いわゆる“嫌なヤツ”というのは、それまで演じたことがなかったんです。だから逆に、おもしろそうだと思った。『こんな顔されたら気分悪いだろうな』とか鏡の前で試してみたりと、けっこう研究してから撮影に臨みましたね」
ドラマの人気につれ、街中で気づかれることも増えていったが…。
「みなさん、犯罪者を見るような目でごらんになるんですね、私を(笑い)。最初のうちはそれも楽しんでいたんですけど、だんだんつらい気持ちになってきてしまって…。撮影が終わったとたん、パーマをかけてヒゲを生やしました。新しい自分に生まれ変わりたい!と(笑い)」
現在は7月の舞台作品『ライムライト』の老道化師役のことで頭がいっぱいだという。次のターニングポイントは、彼をどんな俳優に導いていくのだろうか?
※女性セブン2015年6月4日号