日本の安全保障政策で最も差し迫った課題が尖閣諸島防衛である。右派も左派もこれに異論はあるまい。今年に入り、中国当局の公船の尖閣周辺への領海侵犯は5月中旬時点で13回を数えた。
領海すぐ外側の接続水域ではほぼ毎日、中国公船の航行が確認され、日本の海上保安庁の巡視船が警告と監視を続ける緊張状態が続いている。いつ海上での衝突や中国側による尖閣諸島への上陸、占領という不測の事態が起こってもおかしくない。
尖閣周辺に出没する中国の公船の多くは、中国の海上警備・監視部隊である「中国海警局」に所属している。
中国海警局は2013年、習近平・国家主席が掲げる「海洋強国の建設」のために新設された機関だ。それまで中国の海上保安組織は、国家資源部や交通運輸部、公安部など5部門に分かれて活動していた。それらを統合し、より強化する形で発足した。
中国は海洋覇権拡大を狙っているが、さすがに戦時でもないのに中国海軍が日常的に領海侵犯すれば国際問題となる。
そこで海軍とは一線を画す海警局が、平時に中国の海洋権益を追求する準軍事組織として創設されたのである。海警局が中国国内で「第二の海軍」と位置付けられる所以だ。
昨今の海警局の“軍事力”の膨張はめざましい。昨年、世界最大級となる1万トン級の海洋巡視船を建造中であることや、2015年末までに1000トン級の巡視船を50隻以上保有することが明らかになった。
このペースでいけば、「2020年前後にはアメリカの沿岸警備隊(コーストガード)に匹敵する規模に達する」(中国メディア)という。
発足以来の活動を見ると、主な目的のひとつが尖閣諸島の強奪であることは明らかだ。海警局の船は前述のように日本の海保の警告を無視して周辺海域を暴れ回っている。海警局は海上施設の警備も任務とされているから上陸能力も持つ。
※週刊ポスト2015年5月29日号