「15年前は自分にトート役がまわってくるなんて、想像できませんでした。当時、(『エリザベート』キャストの)山口祐一郎さんも内野聖陽さんも一路真輝さんも、テレビなどでも活躍していて知名度も人気もあって。
主役級はそういうかたでないと務まらないと思っていました。ミュージカルばかりをやってきた俳優が主役をはれるようになったのはここ数年なんです」
こう語るのは、東京芸術大学在学中、同舞台のルドルフ役で鮮烈なデビューを飾った井上芳雄。今やミュージカル界のプリンスと呼ばれ、同じくミュージカル俳優の浦井健治、山崎育三郎と3人で『StarS』というユニットを 結成、コンサートも大盛況だ。日本のミュージカル界を牽引するまでに成長した彼が、ミュージカルにこだわる理由とは。
「奇跡のように、歌と芝居が舞台上でうまくハマる瞬間があるんです。たとえば『二都物語』では、飲んだくれ弁護士の役だったんですが、いつのまにか役と同化していて。気づいたら自然と口をついて歌が出ていた瞬間 がありました。そういう時、やっぱりミュージカルはたまらないなって思うんです」
ファンたちは彼の持ち味である、ロングトーンの高い声を楽しみに舞台に通う。
「見えないところで自分をつねる感覚。限界だと思ったところから、最後にグッとひとひねりすることで、もうひと頑張りできる。筋肉を極限まで使い切るアスリートと変わらないかもしれません(笑い)」
※女性セブン2015年6月4日号