鶴見駅(JR、京浜急行)を出て鶴見川にかかる潮見橋を渡ると、本町通りアーケードが約400mほど続いている。その中ほどに、昭和8年創業の『豊嶋屋(としまや)酒店』がある。
「両親が始めた店で、最初から角打ち営業もしていました。その頃の鶴見には160軒からの酒屋があり、そのほとんどで飲めた。酒屋で立ち飲みは、当たり前だったんですね。残念ながら今は酒屋の数が4分の1ぐらいに減って、飲める店はさらに少なくなりましたけど」と、ご主人の竹野正次(まさつぐ)さん(76歳)。
今は静かな下町の住宅街の風情を見せる本町のこのあたり。昭和の時代は周辺に大小の工場が建ち並び、仕事を終えた人々が、数多くあった角打ち酒屋を巡ったという。
「工場を出てうちの店まで来る途中に、6軒の酒屋さんがありましてね。その全部で1杯ずつ飲んで来るんで、7軒目のうちに着くともうべろべろ状態。それでもちゃんと飲んで帰った。父の頃の常連さんには、そんな人が何人もいたそうです」(正次さん)
80年以上もそうやって立ち飲みを楽しませてくれているこの店。だが、何人かの常連客が「まあどうでもいいことなんだけど、この店に通い始めたころにあれっ、なんか変だなあと感じた」と言いながら、教えてくれた“疑問”がある。それが以下の3つだ。
【1】奥から入口に末広がりになっているカウンター。【2】常識的には店の外に下げるものなのに内側に下がっている縄のれん。【3】乾き物だけ、それも9種類を各少量しか置いてないつまみ。