「火の玉ストッパー」と呼ばれたのはずいぶん遠い昔のようだ。藤川球児がMLB・レンジャーズを戦力外となり、結局、アメリカでは2年あまりでまったく成績を残せなかった。
現地報道によると、藤川には6月15日まで本人の承諾無しにマイナーに降格させられないという契約があったとされる。メジャーでプレーできる40人枠を外れた藤川に対し、レ軍はマイナー契約への切り替えを打診したが、本人がこれを拒否。そのため自由契約となり、日本球界復帰が決定的になった。
争奪戦は早速始まっている。いち早く手を挙げたのは古巣の阪神とオリックスだ。阪神は、「球児は阪神の宝。彼が縦ジマ以外のユニフォームを着る姿は考えられない」(阪神・坂井信也オーナー)とラブコールを送り、オリックスは瀬戸山隆三GMが「調査する」と明言した。
「阪神が一歩リードしているといわれます。藤川を獲得するには出場選手登録枠に空きがないといけないが、阪神はあと3枠あるのに対しオリックスは1枠しかない。しかもオリックスはブランコなど野手の故障者が続出しており、補強するなら投手よりも野手が先でしょう」(在阪スポーツ紙デスク)
ただ阪神の抑えには不動の呉昇桓がいる。そこで藤川には「先発転向」プランが浮上しているという。一昨年6月にトミー・ジョン手術を受けていること、そして低迷するチームのカンフル剤にするという狙いがあるようだ。
ところが、これに真っ向から反対意見を唱える人物がいる。
「藤川が先発? 無理やろ」
と言い切るのは元阪神監督の岡田彰布氏だ。実は岡田氏こそ、2006年に藤川をクローザーに転向させた「火の玉ストッパー」の生みの親なのである。
「藤川にはスタミナに大きな不安があるんよ。アイツは80球前後でガクンと球威が落ちていた。だから俺は、プロとして生き残りたいなら中継ぎで成功するしかないぞ、というて、転向させたんや」
あれから時を経て、藤川も成長しているのでは……そう水を向けると、
「メジャーで活躍できたわけじゃないし状況は変わってないのと違うかな。戻ってきたとしても中継ぎエースでやればエエのよ。メジャーでは環境が合わなかっただけやと思うし、まだそれだけの力はあるやろ。阪神に必要かって? 阪神が本当に手を挙げているかわからんし、それは阪神に聞いてや」(岡田氏)
出戻り藤川に“男気の花道”があるかどうか、注目される。
※週刊ポスト2015年6月5日号