漆黒のロングヘア、顔の3分の1くらいありそうな大きな目。日本の映画やドラマのみならず、ハリウッド映画『キル・ビルVol.1』で世界デビューも果たした女優・栗山千明(30才)。6年ぶりの主演映画『種まく旅人 くにうみの郷』で、アメリカ帰りの農水省のエリート官僚役に挑んだ。淡路島を舞台に、第一次産業に従事する島民との交流を通じて人間として大きく成長していく――。大好評シリーズ企画「転機」今回は、人生の大きな転機を迎えたヒロインを演じた栗山に直撃した。
――映画『種まく旅人 くにうみの郷』は、日本の第一次産業を知るため地域調査官として渋々淡路島へ赴いた女性調査官が、仲違いする兄弟(桐谷健太、三浦貴大)らとの出会いを通じて成長していく物語。この映画の話がきたときはどう思われましたか?
栗山:映画の主演が久しぶりでしたので、お話をいただいたこと自体がとても嬉しかったです。ただ、舞台の淡路島には行ったことがなかったので、どんなところだろうという興味も大きかったですね。農林省から派遣された地域調査官という役なので島のたまねぎ農家や海苔業者で研修をさせてもらったわけですが、私自身農業も漁業もかかわる機会がなかったので、正直なところ、撮影は大変なのかなと覚悟して挑みました。ところが、これが思った以上に楽しかったんです!
――栗山さんの奮闘ぶりは見応えがありました。
栗山:最初は、ひとりの人間として神野恵子をどうまとめていけばいいかなと考えました。私は彼女の一つひとつすべてを汲み取っていった中で、「恵子はちょっと不思議ちゃんなんだ」と自分の中で落ち着けました。冒頭に出てくる神野は米国から戻ってきたばかりのエリート官僚で、「そんな私がなんで淡路島なの?」みたいな気持ちなんです。でも、彼女の根っこはそんな不思議ちゃんなので、住人とのかかわりの中で幼い頃のおじいちゃんの畑のことを思い出したり、昔の自分を取り戻したりしていく。そこにつなげていったら無理がないかな、と思いながら演じていきました。
――映画の中でも言っていましたが、神野恵子という役は何を食べてもかなりおいしそうに見えました。栗山さん自身と重なるところはありましたか?
栗山:そうなんです。神野恵子という女性が驚くところでは私も驚きましたし、リンクするところがたくさん持てたんです。まるでドキュメンタリーを撮っているかのような気分でした。役を演じているんですが、無理なく私自身が旅に行った感覚で撮影することができました。
――撮影期間はどのくらいだったんですか?
栗山:3週間です。ずっと淡路島で撮影していました。地方ロケへ行った時の楽しみといえば「食」じゃないですか。映画のシーンにもあるんですが、淡路島は本当に食べ物がおいしいんですよ。海の幸も、畑で採れるような野菜も。ロケ弁もこれほどおいしいものは「初めて」と言っても過言ではないほどでした。
――でも、栗山さんはいろんな地方に撮影に行っていますよね?