最近、障害物のない平らな場所でも、転びやすい子供が増えている。スマホやゲームなど部屋遊びの割合が増え、体力の低下といった理由が挙げられることも多いが、ポイントのひとつは身体的なバランス感覚だ。亀谷幼児体育研究所を主宰、東京YMCA社会体育保育専門学校の講師でもある亀谷正美氏は、幼児期にバランス能力を養う大切さについてこう語る。
「何年も前から、転びやすい子供が増えている、転んでも手が出ず、顔や頭にケガをする――ということが言われていますが、小さい時に育てたい運動能力はバランス能力です。子供が寝返りを覚えてから、ハイハイ、歩行、小走り、そして固定遊具などを使って遊ぶようになるまでの動作は、全てバランス能力を要する動作です。
例えば、固定遊具での遊びは、直接的に『走る』『跳ぶ』『投げる』といった運動とは結びつかないものの、バランス能力を高めたことにより、神経と筋肉の関係がスムースになり、他の運動能力も高まることが期待できます。さらにバランス能力の発達が、敏捷性や、ボール・縄などといった物を操作する能力向上へ直結することから、あらゆる運動能力の基礎となるものと言えるでしょう」
こうした子供のバランス能力不足の解消にも繋がるアイテムとして、近年注目を集めているのが幼児用ペダルなし二輪車の「ストライダー」だ。2007年にアメリカで生まれ、2009年に日本で販売された同商品は、今年2月に世界累計販売数100万台を突破。日本国内だけでも4月末の時点で、33万台を超えるヒット商品となっている。
そうした現在の流れを「すでに一過性のブームではない、ポジションを築いていると思いますね」と語るのは、ムラサキスポーツ イオンモールむさし村山店の担当者・遊佐真之介さん。
「店頭でなんとなくご覧になって購入するのではなく、初めから『ストライダーを買いに来た』とおっしゃるお客様がほとんどです。購入されるのは親御さんのほか、お孫さんにプレゼントされるといったケースも、少なくないですね。小さいお子さん向けの遊具には、ものによって“流行り廃り”みたいなものがありますが、『補助輪なしで、自転車に乗れるようにするための助走アイテム』という位置付けもあって、必ず通る定番のポジションを獲得していると感じます」(遊佐さん)
また、実際に購入する人たちにとって、「補助輪を外す、助走アイテム」といった目的以外に、「ストライダー」の特色も支持される理由になっている。
「グリップやサドルをはじめ、さまざまなパーツをカスタマイズできるので、見た目やスペックでお子さんは“遊び道具”として、親御さんはお子さんのために“オリジナリティを追求する”点で、モチベーションを高める楽しみ方ができます。
また、世界大会もある『ストライダーカップ』が国内でも広く開催されていて、レースへの参加を前提に、グローブやプロテクターといった、エントリーに必要な道具類などの相談をされることも多いです。各地の『ストライダー』を通じたサークル活動も盛んのようで、そうした仲間同士でカスタムの相談するのも、楽しいと聞きますね」(遊佐さん)