今年3月、国立がん研究センターはがんの罹患状況を地域別に初めて公表。分析した同センターの担当者は「日本はアメリカなどの他民族国家ほど地域性や人種の違いはないはずなのに、思った以上に地域差が見られた」と語る。
がんの「なりやすさ」は県ごとにどう違ったのか。
男性の全部位のがんで見ると、全国の標準値よりも罹患比が1.1倍以上高かったのは秋田、岩手、島根など8県。1倍以上1.1倍未満のグループは北海道、青森など20道県だった。一方、がんになりにくい(罹患比が低い)のは福島、千葉、神奈川をはじめとする11県だ。
「(がん患者の割合は)死亡が多い県と重なる傾向がありました。これらは『罹りやすいため死亡も多い』地域です。ところが、それだけでは説明できない県もある。
例えば長野や広島はがんに罹りやすい県でしたが、死亡は少ない。長野は登録を始めたばかりで数値が不安定という事情がありますが、罹った後の治療などで死亡が抑えられていると推測できます。
反対に、青森はそこまで罹りやすくはなかったけれど、死亡は多かった。検診や治療体制はどうかなど、次の分析に進んでいくことができます」(国立がん研究センター・がん統計研究部「地域がん登録室」・松田智大室長)
※SAPIO2015年6月号