デパートの屋上や遊園地、住宅展示場──動物を連れて行けるところならどこでも、2時間程度で動物園になる。関西を中心に活動する「堀井動物園」は、多くの動物に直接触れることができる移動型の動物園だ。
園長の堀井嘉智氏(51)は、小学5年生からペットショップの手伝いをしていた筋金入りの動物好き。動物輸入商でアルバイトしながら動物たちを集め、19歳の頃に独力で動物園を立ち上げた。
「バイトの初月給で手に入れたのは足を痛めたポニー。そのときは月賦で25万円で買いました。『とうとう馬を買えるんだ』と思うと嬉しくてしかたがなかった」
ハムスターなどの小動物や、肉食獣のピューマやライオン、ラクダにアザラシ、ヘビなどの爬虫類、人気の珍鳥ハシビロコウなど、保有する動物は約800種類1000匹以上にのぼる。
「儲けが出ても動物を買ってしまうので自転車操業です(笑い)。エサ代には年間約500万円かかっています。もちろん動物によって食べるものが違いますから、手間もかかります。アリクイには約10種類の材料をミキサーにかけた専用のエサを与えています」
昨年末には滋賀県の商業施設「ピエリ守山」に常設の「めっちゃさわれる動物園」を開設。
「動物たちと直接触れ合えるのでお客さんにケガをさせてしまうリスクもありますから、1億円の損害保険に入っています。『インコに服のボタンを持っていかれちゃったわよ(笑い)』と笑って済むことも多いですが、過去には実際に治療費などを保険でお支払いした例もありました。
今ではハムスターに噛まれてもケガしないように軍手を用意するなど、安全に動物と触れ合える環境作りを目指しています」
同動物園の約30年間の歴史で最も高額だった動物がキリンだ。
「他の動物園の園長が亡くなったのをきっかけに『ポッキー』という名のキリンを譲り受けたんです。人によく慣れた、かわいい子でね。背中に人を乗せてゆーらゆらと散歩ができました。
当時、キリンがいる移動動物園は全国初ということですごく賑わいました。亡くなった当時はポッキーのことが忘れられず、その後に国内産のキリンを数頭買いました。それが1頭500万円でしたね。彼らは人に慣れなくて……子供の時から育てなければいけないなと感じました。
今では国内産の入手が難しいので輸入を考えていますが、1頭2500万円くらいするんですよ」
ポッキーとの夢の時間をもう一度──。子供たちの笑顔を思い描き、“キリン貯金”に励む日々だという。
※週刊ポスト2015年6月5日号