中国では習近平指導部による反腐敗運動が強力に展開されているが、内陸部の湖北省では中国共産党・政府高官やその家族70人が参加する「刑務所ツアー」が実施された。実際に刑務所に入り、収監されている元上司らのうちひしがれた様子をみせるなど、反面教師的な意味合いをもたせている。
だが、ネット上では「制度を整えようともせず、恫喝するだけでは、問題の解決にはならない」などと反発する声も書き込まれている。中国の英字紙「チャイナ・デーリー」が報じた。
中国では過去30年間で党中央政治局委員の陳希同・元北京市党委書記や陳良宇・上海市党委書記、薄熙来・重慶市党委書記のほか、最高指導部の元中央政治局常務委員の周永康ら「大トラ」を含む420万人以上が腐敗問題で処分を受けている。
このため、湖北省では「70人の幹部や家族が、刑務所に収監されている元当局者らを訪ね、教育目的として、同所内で1日を過ごすツアー」が実施された。
受刑者の1日の行動や食事などを詳細に説明したほか、とくに収監されている彼らの元同僚や上司にも会わせた。このなかで、幹部らは汚職犯の元幹部は、どのようにして犯罪に手を染めたなどについて、自身の体験を踏まえ、いかに人生が狂ったかを語っていたという。
ある見学者は「元当局者らが刑罰を受けながら深く後悔している様子は衝撃的だった」や、「この場所に来て自由の尊さが分かった」との声が漏れるとともに、正直に心情を吐露していたという。
党幹部らの汚職を取り締まる党中央紀律検査委員会機関紙「中国紀検監察報」も「現地でのこうした取り組みは党幹部やその家族に警告を与えるものだ」と指摘している。
家族同伴については、地方では依然汚職が絶えないなか、妻らも参加させることで夫の管理を強化させ、汚職抑止につなげるという当局の考えが透けて見えそうだ。
同種の試みは江西省でも行われており、幹部の妻らが紅軍服を着て、中紀委員会の「廉政教育基地」を見学し、幹部の妻として清廉な政治の建設のためにどのようにして監督していくのかなどについて学習した。
しかし、ネット上では「1度体験したくらいで、悪い人間が良い人間に変わるのか」などと批判の声も上がっている。