横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智の交流戦開幕前は打率.331、40打点、11本塁打でセ・リーグの三冠王。横浜快進撃の牽引役だ。筒香を取材したスポーツジャーナリストの田中周治氏はこう語る。
「プロ入り当初はいつも誰かのマネをしていたが、それをやめて自分の感覚を重視するようにした、と語っていました。アドバイスされても鵜呑みにせず、自分に置き換えてイメージを作り直すことができるようになったことが、今年のブレイクを生んだ」
筒香の開眼には、2人の人物が関わっている。1人目は今年のキャンプに臨時コーチとして訪れた松井秀喜氏だ。
「4番の心得として“打った、打てないで一喜一憂するな”と教えられたことに感銘を受けていました。言葉通り、昨年までは三振するとバットを杖のようについてホームベース上でうなだれていたが、今年は三振しても表情一つ変えなくなった」(横浜担当記者)
もう1人は仲の良い先輩で、現在首位打者を争う梶谷隆幸だった。
「独身の2人はプライベートでも行動を共にすることが多い。よく都内のジンギスカン店で食事しながら、野球談義しているといいます。“打ち方は違うんですが、バットの軌道のイメージや不調になった時にはこういう癖が出始める、といった話が合うので、細かい部分まで語り合っています”と話していました」(前出の田中氏)
専門家も筒香の成長に目を細めている。
「今年はインコースの変化球も打てるようになった。理由は、右足に体重をかけて前へ突っ込んでいた癖が直ったからです。それで変化球にもうまく対応できるようになりましたね。横浜スタジアムは狭く、左打ちの筒香には有利な左翼から右翼へのホームラン風も吹く。史上最年少三冠王を後押ししてくれると思います」(野球評論家・広澤克実氏)
現在故障中のため、交流戦のフル出場は厳しい状況だが、チームは悲観していないという。
「筒香は、シーズン中は新陳代謝を促すために冷水と温水を交互に浴びる交代浴を欠かさず行なうなど、コンディション管理には人一倍気を配っている。完全復帰する日もそう遠くないと見られています」(前出の記者)
ジンギスカンコンビは横浜を17年ぶりの歓喜に導けるか。
※週刊ポスト2015年6月12日号