70年前の戦争で、日本軍はアメリカ軍にまったく刃が立たなかったといわれるが、それは本当なのか。元日本軍エースパイロットたちが語る戦場秘話を集めた『撃墜王は生きている!』(小学館)を上梓したばかりの軍事ジャーナリスト・井上和彦氏が、日本軍の航空部隊の実力について解説する。
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多くの方々に取材して、筆者が確信したのは、日本軍の航空部隊は本当に強かったということだ。
大東亜戦争の序盤で、日本軍が快進撃を続けたのは、航空戦力が圧倒的で制空権を支配できたからで、中盤に劣勢に陥ったのち、終盤になって登場した陸軍の「五式戦闘機」や海軍の「紫電改」は、総合的な戦闘能力で米軍機にひけをとらなかったし、パイロットの練度も相変わらず高かった。
圧倒的な物量の差で、多勢に無勢の戦いを強いられ、消耗し、最後は数でねじ伏せられたが、どれほど不利な状況下にあっても、日本の航空部隊は、米軍に確かな傷跡を残し続けたのである。
戦後、アメリカが日本の重工業を解体し、終戦から昭和27年にサンフランシスコ講和条約が発効されるまでの7年間、航空機の製造を禁止し続けたのは、それほど日本の航空技術とパイロットを恐れたことの証左である。
筆者は、現代のアメリカ海軍の空母艦載機に乗るパイロットにインタビューしたことがある。何の気なしに、「あなた方が戦うのが嫌だと思う戦闘機は何か?」と聞いたら、「零戦だ」と答えたので驚いた。筆者が日本人なので、リップサービスの意味があったのかもしれないが、「1対1の格闘戦に抜群に強いから」とその理由まで口にしたのである。
現代の若いパイロットが「零戦」の名を出すということは、少なくとも、米軍の航空部隊のなかで日本の「零戦」の恐ろしさが、先輩パイロットから代々語り継がれてきたということだ。
※井上和彦・著/『撃墜王は生きている!』より