プロ野球・オールスターの中間発表で最多得票は、DH部門の西武・森友哉だった。セ・リーグで目下三冠王の横浜・筒香嘉智を抑えて両リーグトップである。
「投票してくれるのは嬉しい。でも自分はまだそこまでの選手にはなっていない」
本人はそう謙遜するが、交流戦前までの成績、打率.300(10位)、27打点(9位)、9本塁打(6位)は堂々たるもの。小柄な体でフルスイングする外連味(けれんみ)のなさがファンの支持を集めている。
しかし球界のニューヒーローは大きな課題を抱えている。DH制のない交流戦のセ主催試合はライトで出場しているが、横浜の中畑清監督が「森がライト? よし、全員ライト打ちだ!」と茶化すほど守備が心許ないのだ。それもそのはず、大阪桐蔭高時代は藤浪晋太郎(阪神)とバッテリーを組んでいたように、本業のポジションは捕手である。
DHでの出場になっている理由は、西武には炭谷銀仁朗という正捕手がいることもあるが、捕手としての能力が未熟という面が大きい。田辺徳雄監督も、「まだ一軍でマスクを被らせられない」と語っている。
森自身もそれは自覚している。最近、森を取材したスポーツジャーナリストの話。
「彼は“捕手は準備しなければいけないことが多すぎて難しい。いずれは守って打って、という選手にならないといけないのはわかっているんですが……”と語っています。しかし一方で、“打者としてはプロに入ってもレベルの差に苦労しなかった”と断言している。実際そうなっているので自分を冷静に観察できているようですね」
田辺監督の方針により、森は今季、レギュラーシーズンでは試合前に捕手の練習をしたうえでDHとして出場し、翌日の昼間にはイースタンでマスクを被って出場するという“二刀流”に挑戦している。だが皮肉なことに打者として活躍すればするほど、守備の問題が際立ち、捕手としての評価は下がる一方だ。西武を背負って立つ強打の捕手が生まれるのはまだ先のようだ。
※週刊ポスト2015年6月12日号