黄色のロングヘアにドレスを身にまとい、中性的なオーラを放つ美輪明宏は80歳を迎えても精力的なステージでファンを魅了してきた。その美輪が体調不良を訴えたのは5月18日のこと。
急性喉頭炎により声が出なくなったとして、同月15日から連続4日間上演する予定だった主演舞台『黒蜥蜴』(くろとかげ)の延期を発表した。
異変は前日から起きていた。舞台関係者がいう。
「セリフの“○○なのよ”の“よ”の部分は高音で尻上がりのはずなのに、前日の17日は低音でかすれ声。共演者も“いつもと全然違う”“最後までもつのか”と心配するほどだった」
カーテンコールでの様子もいつもと違ったという。
「お辞儀する時間は決まっているのに、その日の美輪さんはいつもより長く、深々と頭を下げていました。お客様へのお詫びとも取れましたが、体調が悪くテンポが遅れていたのかもしれません。幕が下りた舞台上で、心配した共演者から声をかけられた美輪さんは泣いていたそうです」(同前)
黒蜥蜴は、美輪が長年主演や演出を手がけてきたライフワーク。東京や大阪、愛知など各地をまわり、早着替えなどの見せ場が多く体力を消耗する。公演時間は約4時間。5月15日に傘寿を迎えた美輪にとって、簡単な仕事ではないはず。
昨年10月にも急性喉頭炎でコンサートを中止している。50代の頃には気管支炎に悩まされてもいた。喉は弱点なのか。事務所に問い合わせると、なんと美輪本人から編集部に電話がかかってきた。
「前日に声がかすれ、異変を感じましたの。私は完璧主義者で、不完全な公演をお客様に見せるわけにはいかない。だから延期することにしたんです」
──泣いていたと聞きました。悔し泣きですか。
「嘘おっしゃい。泣いていません」
──80歳で公演を続けるのは厳しい?
「別に……何も変わらないわよ。15年ぐらい使っている大道具があるんだけど、劣化が激しくて処分することにしたの。私よりも先に道具の寿命がきたわ(笑い)。とにかく心配いりません。点滴とお薬で回復しました」
──なぜ、それほどパワフルに活動できるのか。
「お客様への責任感です。節制もしています。地方に行ってもホテルと会場の往復だけ。外食はしない。酒は50年前、タバコは35年前にやめたわ。興行主の方が“こんな芸能人は初めて”と驚くほどよ。規律正しい修道院みたいな生活をしています」
終始ハキハキと答えた美輪。受話器から聞く限り意気も美声も健在だった。
※週刊ポスト2015年6月12日号