その女性は、両手の人差し指でバツを作り、指と指で斬り合う仕草を繰り返す。
「いや、今はもう“コレ”だから。全然わからないの。そういうことは…」
淡々と語る彼女は、北大路欣也(72才)の実姉だ。北大路の老人ホーム入居が報じられたため、神奈川県に住む姉の元を訪れたが、彼女は弟の近況について何も知らなかった。そして実姉は、こう続けた。
「だってあれ以来、一切連絡を取っていませんから」
北大路が愛妻(66才)とともに、介護付き有料老人ホームに入居していたことが『週刊ポスト』(6月1日発売号)で報じられた。入居したのは1年ほど前のことだという。
都内の一等地にあるその施設は、高級ホテルさながらの設備を誇り、カフェテラスや大浴場、さらには映画館まで併設されている。ダイニングは専属シェフによる日替わりメニューが提供され、東京タワーを眺めながら食事を楽しめる。ホームドクターと専属看護師、ケアスタッフが24時間常駐しており、医療・介護態勢も万全だ。入居金は5000万円を超える。
北大路が老人ホームに入居したのは、愛妻のためだという。
「彼は連日の撮影で多忙を極め、家を空けがちなんです。奥さんも今は健康ですが、愛妻家の北大路さんとしては、“自分が不在の間に妻に何かあったら”と心配でならないそうで…。あの夫婦にはお子さんもいませんから、万が一のリスクを考え、今のうちから安心できる施設に入ることを決めたそうです」(北大路の知人)
北大路には老人ホームをめぐる因縁がある。1999年9月、北大路の父で往年の銀幕スター、市川右太衛門さん(享年92)が亡くなった。この時、右太衛門さんが妻のスエノさんと一緒に千葉県館山市の老人ホームに入居していたことが発覚し、世間に衝撃が走った。
「その事実が亡くなるまで隠されていたことに加え、報じられた入居までの経緯があまりに異常だったんです。晩年の右太衛門さんは身内の借金を肩代わりしたことがきっかけで、自宅が差し押さえられるほど困窮していた。ところが北大路さんはそれまで続けていた仕送りをストップして、さらに兄や姉にも一切知らせず、独断で人里離れた施設に両親を入居させたというんです」(スポーツ紙記者)
北大路の実姉は当時、『週刊文春』に苦しい心境を語っている。
《引っ越しを知らされてすぐ、どこに両親を連れて行ったのかを聞くため、弟・欣也の自宅に電話をしました。しかし留守番電話でした。そこで用件を吹き込み、ひたすら応答を待ちました。しかし連絡がない。(中略)なぜ欣也は連絡をよこさないのか。どうして両親の居場所を教えてくれないのか。私たちは途方にくれてしまいました》
最終的に、北大路の弁護士を通じてきょうだいにも入居先は知らされたというが、北大路夫妻は父の入居に付き添わず、両親は手荷物だけ持たされての入所だったという。
そして、2002年7月、北大路は『婦人公論』のインタビューで、この問題についてようやく重い口を開いた。同誌によると、母の足が悪くなったことをきっかけに北大路は両親の2人暮らしに不安を抱き、安心できる施設を探すようになった。
10年以上も両親と話し合いを続け、時には同居を提案したが、独立心の強い父と母に断られてしまい、最終的に信頼できる館山の施設への入居を同意してもらったのだという。
今回、女性セブンは改めて実姉に当時の状況を聞いたが、こう嘆息するばかりだった。
「父の入居先を知って、お見舞いには行ったんですけど…。そこでも“あちら”とはイロイロありましてね。あぁ、掘り起こされるのも嫌。その後、父の葬儀で“あちら”には会いましたが、それを最後に、もう一切の連絡は取っていません」
こんな骨肉の争いを演じたからこそ、北大路は自らが健康なうちに老人ホームに入居することを選択したのかもしれない。弟の入居についてどう思うか。そう問いかける女性セブンに対し、実姉の放つ言葉は辛辣だった。
「別に、なにも思うところはありません。私には関係がありませんから」
※女性セブン2015年6月18日号